※女の子は感謝状の返事のお礼に、玲奈さんへメッセージボードを作り、
オレがそれを届けに行ったことがあった。

数人の女の子は納得したが、一人の女の子は違った。涙ぐんでオレに言った
「わたしもそう思うんだけど、みんなは信用してくれないよ
玲奈ちゃんにメッセージを送ったって言っても、
そんなの本人は覚えてないよ、忘れられているよって言うよ、
そうかもしれないけど、私はありがとうって言いたかったんだもん」

女の子は泣いて、周りの女の子が慰める。どうやらどこかの誰かに、
玲奈さんへお礼を出したことを否定されたり、からかわれたようだった。
からかった人は深い意味はないかもしれないが、この女の子にとっては
大切なものを失った中で、少しでも誰かのために力になって恩返ししたい、
そう思ったからこその行為で、その想いを傷つけられてしまったのだ。

泣いてる女の子をみんなで慰めるが、堰を切ったように涙と震えがとまらない。
【何も持ってなくても、誰かのために力になりたい】
小さな女の子の、助けてくれた全てへの気持ち、大好きな玲奈さんの笑顔、
感謝状の一件で、ようやく芽生えた前を向く気持ちを否定され、女の子は泣いた。

オレは女の子とその友達に言った。
「会いに行ってくる。お前さんの大好きな松井玲奈さんにあって聞いてこよう」
女の子達と泣いている女の子が驚いてオレを一斉に見て言う。

「キバさん?!何を聞いてくるの?」
「わからない。でも玲奈さんにまた会いに行ってくる、伝えようじゃないか。
お礼なんて、何度言ってもいいんだよ。お前さんたちが思うことを伝えてくるぞ」

女の子たちは、泣いている女の子を促した。女の子は涙を吹きながら言った
「応援してます、大好きです、ずっと応援していますって伝えてくれる?」

オレはそれを聞いて胸にこみ上げるものがあった、だから女の子に言った
「それでいいのかい?メッセージを見てくれましたか?とか、
もっと自分の事を言ったり、何かメッセージをもらってきてもいいんだぞ」

女の子は言う
「玲奈ちゃんは覚えてるから・・きっと忘れてないから・・大丈夫・・」

弱々しい返事の中で、少しだけ希望があった。この女の子の気持ちは
なんとしても守らなければ、しかし、玲奈さんに伝える伝言は
当たり前の応援の伝言だった。オレは玲奈さんに賭けるしかないと切実に思った。

しかし、女の子が応援してます!といえば、きっと玲奈さんは
「ありがとうございます!」ってくるに決まっている。
訳を話すには握手券が足りない・・オレは最大の難関に突き当たったまま、
どうすることもできずに握手会場に足を運んだ。
女の子の本当の想いを伝えるべきか、そのまま言われたことを伝言するべきか、
そのプレッシャーのせいで、オレは完全にどうすればいいのか迷っていた。

続く

【SKE48 松井玲奈さん編】
※読みやすいように会話は「れな」と表記することをお許し頂きたい。

キバ「どど、どうも!あの・・お世話になっております・・自分は山田町の・・」
れな「あー!お元気でしたか!お会い出来て良かったです!」
オレ「へ?!あの・・」
れな「感謝状のあと!こども達のメッセージを届けてくれましたね?」
オレ「・・・(涙ぐむ」
れな「伝えたかったんです!どれだけ、こどもたちのメッセージで、
   私が勇気づけられたか、嬉しかったか、私のほうが助けられたか、
   本当なんですよ。だから自分で直接お礼が言いたかったんです、
   こどもたちに伝えてくれますか?」
はがし「はい、そろそろお時間でーす」(しかし、空気を読んだのか剥がさなかった)
オレ「伝えます!」
れな「私は嬉しかったんです、ありがとう!絶対に忘れないからって」
オレ「ありがとう・・ございます!必ず伝えます!」
れな「やっと伝えられました!こどもたちに私の方がありがとうって!」

こうして、松井玲奈さんへの伝言の役割は終わった。
オレはただ、玲奈さんに感謝した。ただ、玲奈さんに頭が下がった。
そして、女の子に伝えるべく、すぐにレポートをまとめ戻って伝えた。

オレ「どうだい。玲奈さんの言葉と想いが全てだよ」
女の子たちはレポートを聞いて飛び上がって喜んだ、
伝言した女の子は両手で顔を覆って泣いた。

オレ「だが、オレは頼まれた伝言を果たせなかった。それは謝るしかない
   伝言を果たせなくて、本当にゴメンナサイ。申し訳ないと謝る他ない」
女の子は涙を拭きながらオレに言った
「ううん、すごく嬉しい・・キバさんは全然悪くないし謝らないで下さい
玲奈ちゃん、覚えていてメッセージも読んでくれたんだ・・
キバさん、誰かのためにって、わたし出来てたよね、すごく嬉しい・・」

友達の女の子達に「そうだよー、よかったじゃん!玲奈ちゃん最高だね!」と、
温かい祝福を受けて、女の子は笑顔になった、すごく良い笑顔だった。

そうだ、女の子は求めていたんだ、自分はひとりじゃないこと、そして
AKBGのメンバーのみんなが教えてくれたように、勇気をくれたように、
誰かのためにと恩返ししたかったんだ。そして、女の子が一番好きな
玲奈さんが救ってくれたんだ、女の子が最も求めた答えをくれたんだ。

女の子の笑顔と、玲奈さんの必死で早口で伝える表情が思い浮かんで、
オレは女の子たちを直視できなかった。泣くのが恥ずかしいので後ろを向いた。

女の子が少し元気な声で後ろからオレに声をかけてきた
「キバさん、ありがとう!すごく嬉しいです、ありがとうを何回も言いたいです」
オレは答えた
「おう!また伝言があれば受けるぞ、今回はオレとしては失敗したしな、
ちゃんと伝言されたメッセージも伝えてないし、今度はちゃんと応援伝えような!
そしてな、玲奈さんの生写真は・・あれはな・・本当にヤバイ、気をつけろよ」

女の子にも、女の子達にも笑顔が戻った
「はい!どうしよう、めっちゃ嬉しい!ありがとうございます!
玲奈ちゃんにありがとうございますだよね!ずっと応援しなきゃ」
オレ「おおん」


続く

そしてその後・・・・・・・・


【SKE48松井玲奈さん リベンジ編】

オレ「こんにちは!お世話になっています。山田町の・・」
れな「はい!!」
オレ「へ?!」
れな「はい!わかっていますよ、私はずっと覚えているし、忘れないです
   約束しました。だから、紹介なんてしなくても大丈夫ですよ(笑」
オレ「こども達からです。応援してます、大好きです、ずっと応援しています!と」
れな「嬉しい!子供たちは元気ですか?私は元気だよ、みんなも体は大切にって
   いつも応援してくれてありがとう、そう言っていたって伝えてくれますか?」
オレ「はい。こちらこそ感謝です!こどもたちもみんなも、ずっと応援しています」
れな「いつも遠いところからありがとうございます!みなさんにもヨロシクです、
   お互いに体には気をつけましょうね、また行きたい、いえ、必ず行きます!」

こうしてオレは無事にリベンジも果たすことができた。
女の子にはもちろん伝えた、その喜びようや現在の元気さは伝えるまでもない。
もうすぐ2012年も終わる。震災からもうすぐ二年が経つ。

女の子は仮設住宅で、お気に入りのSKE48の曲を聴きながら、
多くの人に見守られ、家族と新年を迎えるんだ。
何もなくたって、誰かのために想う事はできる。それが大切な事なんだ。

この場で改めて松井玲奈さんとファンの方々にお礼を述べさせて頂きたい

「玲奈さん、女の子に誰かのためにと教えてくれたのは玲奈さんです
【気づかせてくれた、ありがとう】あなたはそう言ってお礼をいつもいう。
何度お礼を言ってもいい、そんな大切な事を教えてくれて、本当にありがとう」
松井玲奈さん
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