兄との電話で、何かの話の流れで、
「普通の家族だったらこうする」と言うと、
「うち普通じゃないから」と兄が言う。
「普通だったの」
「普通じゃない」
「普通だったのよ、私もお兄ちゃんも、あんなに殴られたら普通でも普通じゃなくなる」
と言うと、
「昔のことは、水に流せよ」と言うので、
「性的な虐待もあった」と初めて言ってみた。
流そうと思っても、思い出してしまう。
小さい子供を見ると、よくこんな小さい子に、と思って辛くなる。
まぁ、面倒な話を持ち掛けて悪かったね、と言って電話を切った。
それから兄と父がどんな話をしたか知らない。
一週間後、父から電話があった。出なかった。
そのまた一週間後、電話があった。出なかった。
こちらから電話をしても、出ない、話も聞かない奴と話をする必要がどこにあるのだろうか。
うるさいし、出るつもりもないので、実家からの電話は、着信拒否にした。
それから2年くらい経つ。
生前贈与の話を持ち出す前に、父は軽い脳梗塞を二度ほど起こした。
もう80歳を超えている。
いつ死んでもおかしくない年齢になった。
小さい頃、しこたま殴られたこと、「面倒を見てもらうつもりはないから殴っていいんだ」、と言っていたこと、を思い出す。