ICUから移った一般病棟は、4人部屋でした。

 

同じ病室の他の面々は、症状の重さもそれぞれでした。

 

お向かいさんは、大人しいおじいさんでした。

いつも大人しく寝てた。

半身マヒ。

旦那ちゃんと同じくらいの重み。

症状も時期も似てる。

 

お隣は、20代か30手前か、といった若い方でした。

目を覚ますことはなく、いびきをかいて寝ています。

食事は鼻からチューブで、トイレはオムツ。

意思の疎通はできない様子でした。

 

時折やってくる両親と思しき人も、若く、そして疲弊していました。

 

看護士さん達が偉いなぁ、と思ったのは、

そんな寝たきりで意識が無くても、

「〇〇さーん、オムツ取り替えるよー」

とか、

 

「痰の吸引するよー。痛いね、苦しいね、ごめんだよ。」

と明るく話しかけて、

 

時に、二人組でお世話をしていて、

「ねぇ、この位置にクッションって要る??私だったら要らないけどなぁ・・」

と、常に目の前にいる相手を思ってお世話をしていたことです。

 

働く看護師さん達は、手を休めることなく会話をしながら楽しそうに笑ったり、そして無理して笑うということもなく、どこまでも自然体な感じが印象的でした。

 

4人中、3人は鼻からごはん。

 

1人は、わりと軽い症状で、おかゆを貰っていました。

 

旦那ちゃんは、それを感じて、自分も何かを食べたい!

とタオルや人の指を噛んで悔しがり、欲しがりました。

 

噛まれるのは、痛い。

痛かったけれど、こんなにも噛む力があるなら何でも食べられるね、とその時思いました。

 

軽症の人は、メンバーの入れ替わりが激しく、

 

時に入院している、ということが分からず、

「なんだこれじゃまだなー」と言って、点滴を引きちぎろうとしていたり!!!

 

慌てて看護師さんを呼びに走る。

 

また別の人は、

点滴置き去りで、ベットの足の方から降りようとしていて、管が伸び、

 

(あまりの光景に、サンタさんが屋根に上っている姿に見えた)

 

「ちょ、ちょ、お、お父さん!」

(なんて呼んでいいのか分からない程慌てた)

 

「ちょっと待った!看護師さん呼んで来るで!待って、動かないで。ね!ね!」

 

「おぅ、待っとる、待っとったらええんやな。分かったでぇ」

 

という声を背中にナースステーションまで走る、ということしばしば。

 

また別の人は、

奥さんが見舞いに来て、帰ってしまうと淋しくなり、ずっと、

「おっかぁ?」という声がしているので、

 

「あいよー」と返事をすると、

 

「植木の水お願いね」と言うので、

 

「分かったよー安心して寝とりー」と声をかけると、

 

「うん!分かったぁ。安心した。」と子供みたいにかわいいおじいちゃんがいたり。

 

鼻からチューブで胃へ直接ごはん、なわけですが、それをしていると、そのチューブを抜かれると非常に大変だそうで、

 

大体の人が、動く方の手にミトンをし、

 

寝ている時は、柔らかい包帯で拘束されるわけです。

 

そして、旦那ちゃんのお世話をしていると、遠くの部屋から

 

「うぉーい!わしは、つながれておるぞー!」「拘束されてるぞー」

「わしは、まーとーもーだーぞー」

 

という元気な声での苦情と、その後に続く看護師さんの

 

「ですから〇〇さん、ご説明した通り・・」という困った声が聞こえて来たりしていました。

 

あの時の皆は、どうしているのかな。

 

友達になれるわけでもなく、もう会えない人達とのすれ違うような出会いと別れに、最初は寂しかった。慣れて行くしかなかった。