神保町はカレーと古書の街だと思われがちだが、先日紹介した中華料理以外にも、洋食、和食、共に安くて美味い名店がしのぎを削っている。今回は前回予告した「うなぎ」の名店について書いてみたいと思う。

集英社の真横にあって、何となく気になるんだけど、とても入りにくい老舗鰻店がある。今荘(いましょう)は、私も数回しか入ったことがない。と言うのも、営業はランチ営業だけで、夕方からやってないので、神保町で働く方には手が届きやすいが、私のような者は、平日のランチにわざわざ訪れる必要がある。確か土日も休みだったはずだ。メニューは鰻重だけで、他のつまみはおろか、ビールすら置いてない。徹底して鰻を食べさせるこだわりの名店である。

当時、値段は比較的リーズナブルで、都内の名店のような、ちょっと躊躇するような金額ではなく、思い切って食べることができる最高のごちそうだった。私にとっては、他のメニューが無いのも有難く、松竹梅も、上、特上の区別もなく、ただただ「うな重」一択のメニュー。焼き上がるまで、軽くビールを飲みながら待つのが個人的には好きだが、諦めもつくというものだ。余談だが、うなぎ屋に入って、メニューに鰻重の松竹梅があると、一番高いのは五千円はするし、安くても三千円台となると、無難に真ん中の「竹」を選んでしまう自分が嫌で笑、今荘に入ってメニューを見た時に、清々しい気持ちになったのは私だけだろうか。ここで、鰻重を注文するときの、私の自己暗示を紹介する。鰻重の松竹梅の差は「量」の差だ、と思い込む。そうすれば、一枚しか乗っていない鰻重を頼んでも平気でいられる。ちなみにうな丼は無いのであしからず。

 次に紹介するのは「かねいち」ここはオオドリーの隣にあって、案外入りやすい。

昔からある老舗ではあるが、私はさくら通りにある「なかや」のファンだったので、なかなか行く機会が無かった。ところが、なかやが移転することになって、ふらふら神保町をさ迷っている時に入ったここの鰻重も美味かった。

値段も良心的で、満足できた。夕方からも営業しているので、ちょっと飲みながら鰻重を待つこともできる。ただ、店内はあまり広くないので、野暮な飲み方は厳禁だ。

 そして、最期に紹介するのが、先ほどフライングした「なかや」ただし、私が今よりずっと貧乏で、当時1600円ほどだったうな丼を何度も食べに行った、あのさくら通りの「なかや」ではなく、白山通り沿いに移転した「なかや」にリニューアルして最近初めて行ったので、あえて紹介する。以前、なかやはさくら通り沿いにひっそりとあった。店名の由来かどうかは定かではないが、店舗の外側の扉を開けると、もう一枚、のれんと扉があって、文字通り「なか」にあるような店だった。若い頃、普通に鰻を食べる余裕が無くて、それでも食いしん坊だったので、とにかく鰻が大好物で、そうかといって、宇名ととで、ワンコインうな丼を食べるのも嫌で、その結果行くようになったのが、馴染みのある神保町のこの店だった。当時は千円台でうな丼を食べることができた。有難かった。今では二千円台になっており、鰻重も、他店と変わらないくらいの値段になってしまったが、それでも、私はこの店が憎めない。

先日、移転後、初めて入店したが、店内は広く、お酒や、酒の肴が豊富で、今時の洒落たうなぎ屋という印象だった。以前の私なら、幻滅して、二度と行かないと思ったかもしれないが、二千円台になったとは言え、昔から馴染みのある「うな丼」がまだメニューにあり、懐かしくて、じーん、ときてしまった。昔のなかやの鰻重は白焼きっぽい鰻の印象だったが、今回注文した鰻重は、オーソドックスな美味い鰻という感じで、満足はできたが、昔の印象とは違った。まあ、過去の印象もバイアスがかかっているので、信用できたものではないが汗。

充分美味かったが、お得感は無くなった。それでも、また機会があれば行くかもしれない。

ちなみに余談だが、皆さんは、うな重をどこから食べ始めますか? 私は左下から食べ始め、右下へ移動し、その次に左上、右上と食べ進めます。どーでもいい話ですが、重箱を回転させて、上段を手前に持ってくる食べ方は好きじゃありません。勿論、食前にビールはいただきました。

ビールを飲みながら、待ってる時間が一番好き。やっぱ生ビールじゃなくて、瓶ビールでしょう。では、また。