ハマ管のブログ

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1980年代のハードロック/ヘヴィメタル中心の内容です。自分が気に入っている作品の内容など、とにかく音楽の部分について語りたいです。同世代の方から共感いただけたり、このブログを読んで作品に興味を持ってもらえれば嬉しいです。

1980年代のハードロックやヘヴィーメタルを中心に作品そのもそを掘り下げて書いていきたいと思います。その時代をリアルタイムで過ごした人は「そうそう!」と共感してほしいですし、知らなかった人には興味をもってもらえる入り口になったら嬉しいです。1960~1970年代のロックなんかも大好きで、こちらも取り上げていきたいと思います。
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 STAMPEDEの名前を聞いてピンとくる人というのは、あのNWOBHMNew Wave Of British Heavy Metal)ムーヴメントの時代にIRON MAIDENSAXONらは勿論のこと、マニアックとまではいかないまでも、ムーヴメントの脇役的存在といえるバンドにも興味があった人だと思う。40代半ば以上の年齢の人が多いかな???

 

 さて、そのSTAMPEDEは「THE OFFICIAL BOOTLEG」(1982)というタイトルのライヴ・アルバムでPlydorからメジャー・デビューしたイギリス出身のバンドである。当時のPlydorは、制作費をケチって費用の掛からないライヴ・アルバムでデビューさせたとのことだ。こういった例は他のバンドにもあったが、新人バンドがレコード会社に抵抗するわけにもいかなかったのだろう。バンド側も想定外の展開に不満を持っていたらしいが、この『Reading Festival 1982』出演時の音源を中心に収録されたデビュー作は、彼らの魅力が凝縮されていた。

 バンドの中心となるのは、義父と息子の関係にある、リューベン・アーチャー(Vo)とローレンス・アーチャー(G)だ。特にリューベンの歌唱や声質が、UFOのフィル・モグを彷彿させるものだったことから、UFOと比較されることが多かったバンドだ(つまり、味のあるオヤジ声ってこと:笑)。実際に曲調もUFOとの共通性を感じるものが少なくなく、そこに場合によってはTHIN LIZZYっぽいテイストもあるといった感じだろうか。そして、リューベンの義息子であるローレンスのギター・プレイにも触れておきたい。UFO彷彿のサウンドだけに、ローレンスは当然の如くマイケル・シェンカー的なプレイが期待されたし、実際にマイケル型のギタリストと認識されていた。しかし、STAMPEDE2枚のアルバムを残して解散した後のソロ・アルバム「L.A.」(1986)や、それこそマイケル的なプレイが求められるはずのUFO加入後の「HIGH STAKES AND DANGEROUS MAN」(1982)で聴くことのできるプレイは、泣きも希薄で良くいえば渋いと評することができるものの、地味という印象の方が強い。そういったことを考えるとローレンスの本質は別のところになるのかな?と思うこともある。STAMPEDEでは、マイケルほど徹底的に泣きを発散するタイプではなかったが、各所で泣きを絡めたプレイもあったし、適度に構築されたソロやフレーズをメロディアスに歌わせるようなプレイ(そういった部分こそマイケルとの共通項を感じるのは私だけ?)でファンの期待に応えていた。それだけに、その後のプレイは「???」だった。UFO在籍時には、来日公演にもメンバーとして帯同しているが、その際もマイケル在籍時の楽曲を再現するにあたって、テクニック的にもセンス的にも全く問題なしのプレイを聞かせてくれている。


 詳しい経緯は知らないが、何年か前からSTAMPEDEが再結成してライヴを行ない、3rdとなる再結成アルバム「A SUDDEN IMPULSE」(2011)を発表している。メンバーを見てみると、リューベンとローレンス親子、オリジナル・メンバーのコリン・ボイド(B)も参加している。そして、以前からローレンスらと活動を共にしていたスティーヴ・グレイストーン(Ds)、ローレンスがスケジュールの都合で全面参加できなかったことから、助っ人としてロブ・ウルヴァーソン(G)とクリス・クロウズリー(G)が参加。約30年の月日を超えてSTAMPEDEの新作なのだ。正直、期待はしていなかったが、これが悪くないのだ!。

 1曲目“Send Me Down An Angel”のイントロであるギターの抜けの良いサウンドにこそ現代を感じさせるが、そこに当時と何ら変わることのないリューベンのヴォーカルが聞こえてくると、これぞSTAMPEDE!と少し感動。でも、リューベンって既に60代後半だったはず… ブリティッシュ・バンド的なフィーリングを感じさせるキャッチーなサビも良いし、ローレンスのギター・ソロもメロディーを歌い上げ、後半には嫌味にならない程度に音符を詰込んだプレイを聴かせてくれる。ミッドテンポながらもSTAMPEDE復活を告げるに相応しいオープニング・チューンだ。続く“Jessie”も同じくミッドテンポの展開の中にキャッチーなサビが光る。UFOの曲だといわれれば信じてしまいそうな部分も(笑)。ギターは、助っ人の2人の名前がクレジットされており、どちらがソロをプレイしているのかは不明だが、曲を活かすプレイに徹しているという印象。3曲目“Having Fun”16ビートのグルーヴィーなリズムが軸となる曲調ながら、ライヴでもオーディエンスが合唱できるようなサビが印象的だ。バラード“Make A Change”では、リューベンの声が何とも味わい深い。決して巧いといえる人ではないことは、こういったバラードでこそ判るのだが、しみじみとした味わいは、巧いだけでは醸し出すことのできないものがある。

 個々の楽曲の完成度は高い。しかし、作品を聴き進めていると気になる部分が出てくる。作品全体を通してミッドテンポの曲が中心で、バラードや“Homeward Bound”のようなアコースティック・ギターを絡めた曲が彩りを添えるものの、流れに大きな起伏を与えるほどの役割は果たしていない。極端かもしれないが、ここに往年の“Moving On”的なアップ・テンポの曲があれば、もっと聴き応えのあるものになったのではと思うと少し残念だ。そうすることで後半の躍動感溢れる“Shame On You”、レイドバック感覚の“Humble Pie”といった曲も映えてくるのではと思う。確かに、STAMPEDEというバンドは、IRON MAIDENSAXONのようにギター・リフや曲の激しさを売りにするサウンドではなく、往年のブリティッシュ・ハードロックの持つ味わいを1980年代に打ち出していたバンドだった。しかし、当時の彼らには、「THE OFFICIAL BOOTLEG」で聴くことのできる、サウンドに張り詰めた緊張感や弾けんばかりの若い勢いがあったのも事実。ブックレットやHPで見る近年の彼らの画像や映像を見ると、それなりに年齢を重ねて、それなりに落ち着きを身に付けたであろうことは想像に難くない。だが、ファンというものは、往年の要素を全て求めてしまうものなのだ。

 そして気になった点がもう一つ。キーボード不在という点である。キーボードはサウンドに合わないという理由で元々在籍していたメンバーを解雇したバンドだが、スタジオ録音に関してはキーボードを大きくフィーチャーしていた。“Days Of Wine And Roses”などは、明らかにライヴ・ヴァージョンよりもスタジオ・ヴァージョンの方が良いくらいだ。新作においても、正式メンバーではなく当時の様に外部のメンバーが参加していれば、作品の印象も変わったものとなったのでは?


 とはいえ、先にも述べた通り、個々の曲の完成度の高さや各メンバーのプレイは堅実そのものである。中でも、約半数の曲でしかプレイできなかったローレンスのプレイは、当時よりも巧くなっている。メロディーの説得力や必要最小限のテクニカルな部分(現在のハイテク・プレイヤーとは比較にならないが…)は、やはり助っ人の2人よりも存在感がある。このクオリティーならば、一度聴いてCDラックに入れたままということはなく、時に思い出したように聴いてみたくなることがあるだろう。即効性はないかもしれないが、ジワジワと良さが染み入る…そんな作品だ。そして、こういった作品を求めてしまうのは、作品全体に漂うブリティッシュな薫りを求めて止まない人なのでは??? シャウトではなく、渋さで勝負するリューベンのヴォーカルや、サビのリフレインを中低音のヴォーカル・ハーモニーで覆う手法、派手さはなくとも仄かに嗅ぎ取ることのできるポップ・センスあたり、ブリティッシュ・ハードロック往年の魅力が脈打っている作品だといえる。何も新しいことなどやっていないし、過激な音楽に慣れきった若い世代が聴けば随分と刺激に乏しいサウンドに感じるだろう。しかし、その古典的ともいえるサウンドを未だに求めてしまうオッサンもいるのだ。まさか、この作品がロックの歴史やHM/HR史に大きな足跡を残すようなことがないのは、我々は勿論のこと、本人たちも充分に自覚しているはずだ。

 

 IRON MAIDENSAXONDEF LEPPARDら、NWOBHMムーヴメント出身バンドの数少ない生き残りが現在も第一線で活躍しているバンドにも感動を覚えるが、こういったSTAMPEDEのようなバンドが、ひっそりと再結成して、(数々の注文をつけてしまったが…)手堅い作品を発表しているのは、好きな人には何ともいえない喜びを感じさせてくれるのではないだろうか?