今年も健康診断の日が近づいてきました。

いつもは恐怖の日でしたが、今年はちょっとワクワクしています。

 

数年前に某SNSにアップした日記をアップします。

メチャメチャ長いのでコーヒーを飲みながらゆっくりとお楽しみください。

 

梅雨だというのに雲ひとつなく晴れ渡った日だった。
朝の喧騒も落ち着き始めた頃、俺は事務所でせわしく事務処理に追われていた。
毎年この時期になるとある組織に拉致され拷問を受ける破目になってしまう。
毎年クリスマスイブに事件に巻き込まれるジョン・マクレーンのようなものだ。
彼が世界で一番ついてない男とは片腹痛い。
俺からみれば彼は十分にツキを持っている、彼はまだ生きているしかも後遺症もなしだ。
彼以上についてない男なんざごまんと居るってことだ。
そんなことを考えていた時。
誰かに呼ばれた気がして振り返った、後頭部に衝撃が走った。
同時に眼の前が真っ暗になり天地が逆さまになった様な感覚が襲ってきた。


光が目に当たる・・・
眩しい
薄っすらと目を開ける。
白い天井に蛍光灯型のLEDライトが並んでいる。
身体を起こすと正面に40インチほどの液晶モニターが「がんの早期発見がどうの」と文字を映し出していた。
右手を見ると10時から11時の方向に白いカウンターがありその向こうに20代と思しき女性が3人立っていた。
さらに右を見るとエレベーターが見える
ぐるっと一通り見渡したが出口はそのエレベーターとその横の階段しかない。
カウンターの前を通り抜けなければここから脱出出来ないということだ。
「どいる!」
突然名前を呼ばれ仕切りのあるカウンターに連れて行かれた。
カウンターの向こうでは若い女がニコニコしながら
「どいるさん、これからあなたは様々な方法で知っている情報を搾り取られることになります。苦痛を味わいたくないのなら我々の質問に素直に答えることが望ましいでしょう」
「・・・・」
「まずはこのコップに小水を採って来なさい」
「俺に命令をするんじゃない」
ドスッ!
後ろからレバーの辺りをしこたま殴られ動きを止められたところを大男に引き摺られるようにTOILETマークのある個室に連れ込まれた。
今ここで暴れるのは賢い選択ではない。
従うフリをしながらコップに用を足した。
少し赤いものが混じっているコップを便器の奥にある小窓を開きコップ置きと思われる処にそっと置いた。
いつもの事だが他の3つのコップとブレンドしておいたのは言うまでも無い。
TOILETを出てカウンターの前を通りエレベーターで3階に向かえと指示された。
言われたとおりにカウンターの前を通るとき先程の女を捜したが見つけることは出来なかった。
それにしても、あの女はとんでもない事を笑いながらさらっと言えるものだ。
3階に着くと正面奥に小さなカウンターが見えた。
手前には左右にドアがある。
右に入るよう正面のカウンターの方から歩いてきた年配の女が指示をする。
言われたとおりに右の部屋に入る。
ロッカーが迷路のように幾重にも並んでいる。
壁際を探ってみたが、この部屋には窓が無い。
一番奥に進み壁をチェックする。
それほど厚くは無いようだが、道具も無しにこの壁に穴を開けるのは容易ではない。
右端のロッカーだけが開いていた。
中を覗くと囚人服のような薄い生地の検査服が吊るされていた。
服を脱いで着替えろと指示が貼ってある。
ここはひとまず従うことにした。
指示通り部屋を出てカウンターに向かって歩き出すと先程の年配の女がここで待てと右側の椅子を指差す。
そこには5脚ほどの椅子が並んでいて既に2人の男と1人の女がうなだれて座っていた。
まず、男が呼ばれた。
嫌がる男を無理矢理引き摺っていく看護士姿の女。
華奢なようにみえてかなりの筋力を持っているようだ。
短めのスカートから見える脹脛は筋肉で盛り上がっている。
逆らっても勝ち目は薄い。
女、男と次々と呼ばれては何処かに連れて行かれる。
緊張で喉が渇く。
「どいる!」
俺の番が来た!
筋肉隆々の足が見える。
顔を上げると目の前に小柄な若い女が立っていた。
促されるまま女の後をついていく。
小さなテーブルを挟んで椅子に座らされた。
腕をまくって出せと、言われるままに右腕をテーブルに乗せる。
太いベルトで右腕を締め上げ圧迫する。
血管の脈動がはっきりと感じられる、指先が痺れてきた。
右腕を締め上げていた太いベルトが急に緩む。
腕に血液が一気に流れ込む。
ホッとしたのも束の間。
今度はゴムのベルトでもう一度腕を締め上げ、親指を中にして手を握り締めろという。
指示に従うといきなり浮き出た血管に注射針を刺されてしまった。
ドクドクと流れ出る血液を採取される。
今度で三本目だ。
少しずつ血液を抜いていく、昔からある拷問だ。
しかし女は何も質問しない。
ただ血を抜いていくだけだ。
こいつの目的は何だ?
俺から情報を取るのじゃなかったのか?
しかし、採取のしすぎだ、頭がボーっとしてきた。
「どれだけ血液を抜く気だ?頭がボーっとしてきたぞ」
「それで?」
「倒れてもいいか?」
「ダメです!」
「ちっ!」
「殺しはしません。これで終わりです」
そう言って女は注射針を腕から抜いた。
ふらつく俺を今度は部屋の一角にある50cm四方の台にはめ込んである金属プレートの上に足を合わせて立ちなさいと命令する。
血液を抜かれ深く考えられない俺は言うとおりに台に乗った。
頭頂部に衝撃が走った。
一瞬ではあったが目の前に幾つもの星が飛んだ。
頭に何かを埋め込まれたのか。
不安が過る。
お構い無しに女は眼の前の椅子に座り双眼鏡様の物を覗けという。
嫌な予感がするため難色を示すと、眼鏡をして覗けという。
後ろで屈強な男が腕組みをして監視している気がする。
仕方ないのでそれを覗き込むと、ドーナツ状の円が見える。
よくみると一角が欠けている。
上下左右何処が欠けているのか言えという。
これが噂に聞いた視力検査機という名の洗脳マシーンなのか。
この程度のもので洗脳される俺ではない。
洗脳に失敗したとみた女は、昔街角でよく見かけた公衆電話BOXのような箱型の部屋に俺を押し込んだ。
閉所恐怖症の俺にはかなり効果のある拷問だ。
ヘッドフォンを掛けさせられ外部の音を遮断されてしまった。
「キーーーン」
鋭い音が頭の中まで入ってくる。
目の前にぶら下がっている何かのスイッチと思しき物を掴み必死でボタンを連打する。
「ブ~~ン」
今度は低周波だ!
頭が割れそうだ!
ボタンをこれでもかと言うぐらい連打連打する。
「キ~~~~ン」
またもや高周波攻撃に晒される
ボタンを押す気力も無い
ぐったりしていると
「ブ~~~~ン」
低周波だ!
高周波と低周波の波状攻撃を受けている。
これはヤバイ
あることないこと喋ってしまいそうだ
そう思った時、不意にドアが開いた。
倒れこむように外に出る。
眼の前にあの女が立っていた
「私はここまでよ」
そう言い放つと何処かへ消えていってしまった。
ふらふらと立ち上がり出口を探そうとさ迷い歩く。
行き止まりに椅子が2列に並んでいる。
溺れていた者がギリギリ辿り着いたように椅子に崩れ落ちる。
ここで体力を少しでも回復させなければ
目を瞑り呼吸を整える。
眼の前の白い壁が音も無く開き若い女が現れた。
マスクをしているが大きく綺麗な瞳が美人を想像させる。
その大きな瞳で中に入れと合図している。
美人に逆らう術は持ち合わせていない。
部屋の中は明るく奥にベッドが見える。
恐る恐る足を踏み入れると、その女が服を脱いで上半身裸になれという。
良いのだろうか・・・
ドスッ!
腹に拳がめり込む
腹を押さえて前のめりになると
「腹を引っ込めるな!この豚が!」
と罵声を浴びせられる
ちょっと嬉しい
気を取り直して女に反撃を加えようとしたその時
女が俺の腰に手を廻しメジャーを腹に巻きつける。
フン!と鼻で笑い何か記入している。
突然のことで唖然としているとベッドに横になれと言う
ドキドキしながらベッドでスタンバイ
手足胸に電極を貼られた!
罠だったのか!
電撃拷問だ
女が後ろを向いている隙に電極を外しダッシュで部屋を飛び出す。
右手の壁にもうひとつドアがあった。
そのまま飛び込む。
ドアを開けると直ぐにカーテンが遮る。
カーテンを開け中に踏み込む。
正面に年配の女性が机に向かって座っている。
彼女の前に丸椅子が置いてある。
聴診器を持ってニヤリと笑っている。
そういえば以前似た様な状況で黙秘をして大変な思いをしたことを思い出す。
仕方ない質問には当たり障りなく答えてやろう。
聴診器をはだけた胸に当て機械的に動かしている。
何も聞かれない・・・
聴診器を外しても何も言わない・・・
「ここを出て真っ直ぐ進んで8番の前で待ちなさい」
それだけ?
不安が頭を持ち上げるが脱出のチャンスかもしれない取り敢えず部屋を出る。
彼女の言う8番の前に置いてある椅子が目に入ってきた。
座って周りの様子を伺い脱出のチャンスを待つ
椅子の前の重そうな金属扉がゆっくりと開く。
中から俺の名前を呼ぶ声がする。
地獄の扉が開いたような感じだ。
魅入られたように扉の向こうに吸い寄せられる。
薄い青色の服を着た女が居た。
それと部屋の真ん中に1台の機械が置いてある。
丁度俺の胸の辺りに50cm四方くらいのガラスの板がはめ込まれたボックスから足が生えたような奇妙な機械だ。
そのガラス板に胸を当て暫く待てという。
いったん部屋を出て行った女は直ぐに戻ってきた。
この部屋を出て右手突き当りの部屋で最後の調査を受けろと言い出した。
抑揚の無い口調に恐怖を感じた俺は指示に従い部屋を出て右手突き当りの鉄製の扉を開いた。
そこにも女が待っていた。
そういえばこのフロアで男の姿を見ていない。
ベッドを立てたような機械が置いてある。
女がその端に立って粒状の何かを飲めと持ってきた。
一口で飲み干す。
胃が一気に膨らむ
「ゲップをしないように」
新手の拷問か。
その後白い液体の入ったコップを持ってきて一気に全部飲めと言う。
これもまた拷問なのか
苦しいが屈服はしない。
一気に飲み乾すとベッドが傾き始める。
と同時にマイクを通して身体を右に向けろ
左から一回転しろ
さらにベッドが傾き頭が下になる
必死にしがみつく、そんな中でも左向け、ゆっくりと右からうつ伏せになれと
次々と身体の向きを変えさせられる。
胃の膨満感に加えてのアクロバティックな体勢の入れ替え
結構堪える奴も出るだろう
最後にベッドの横からマジックアームが出てきて俺の胃の辺りを思いっきり押した時には白いものが出るかと思った。
何とか俺は耐え切った。
ここまで耐え切った奴はいない、褒美だと言って錠剤を2つくれた。
「これはさっき飲んだ白い液体の解毒剤だ、大量の水と一緒に飲みなさい」
「・・・・」
「疑うのも無理は無い。私はお前の味方だ」
「何故俺を助ける」
「今は言えない。その内また会う事もあるだろう。私が出口まで案内する」
そういって女は鉄の扉を開けて出て行った。
彼女の後を追ってロッカー室に戻り私服を取り戻す。
着替えた後、彼女の案内で2階を経由して1階駐車場に誰にも咎められずに出ることが出来た。
駐車場の車を1台拝借し恐怖のビルを後にした。
この後2時間もしないうちに白い恐怖との再戦が待っていたのは秘密にしておこう。