「夫婦二人から二人の子が生まれれば、人口に変化はない」ようにも思えますが、言葉の定義を調べてみると、

・合計特殊出生率(合計出生率);15歳から49歳までの年齢別出生率を合計したものをいい、1人の女性が一生の間に何人の子を産むかを表す。2020年の日本の合計特殊出生率は1.33である。

・総出生率 (General fertility rate:GFR);年間出生数を、15歳から45歳の女性の総人口で割った数。15歳から45歳の女性1,000人あたりの出生数。

・標準化出生率 (Standardised birth rate, SBR);性別・年齢別人口構成を、仮定の標準人口と比較したもの。

・完結出生児数;夫婦の最終的な平均出生子ども数。

で、「完結出生児数」が日本人の標準的な考えである「夫婦による出生数」だと思うので、これで考察します。

 「夫婦の出生力(完結出生児数)」を見ると、

 

 


1977年の 全年齢区間:2.19
  〃  の23~24歳:2.22

2015年の 全年齢区間:1.94
  〃  の23~24歳:2.10

で、元の表を見ると、2015年でも妻が25歳未満の場合は全て「完結出生児数」は 2.1以上 となっています。また、2015年で夫婦の居住環境を見ると「完結出生児数」は、

非人口集中地区  :2.11
人口200万人以上:1.81

親との同居世帯  :2.03
 〃 別居世帯  :1.83

です。都会の親との別居世帯が人口を減らし、田舎の三代同居世帯が人口を増やした分で、全体の人口減少速度を低減していると言えます。

 計算を簡単にする為に、例えば、女性一人が一生に二人子供を産む(寿命まで、子を含めて誰も死なないと仮定する)場合を考え、家に男女二人がいて全員が80歳まで生きるとして、以下の条件にすると、

① 全員が20歳に二人の子を産む場合。
 生まれた子が20歳になって二人の子を産むので、最初の男女が死亡(80歳)する直前には合計8人が生存している事になり、以降生死が均衡して8人の世帯になる。

② 全員が40歳に二人の子を産む場合。
 生まれた子も40歳になって二人の子を産むので、最初の男女が死亡(80歳)する直前には合計4人が生存している事になり、以降生死が均衡して4人の世帯になる。

 つまり、社会通念上で「結婚しなければ子供が生まれない」として、夫婦が一生に二人しか子供を生産(しょうさん)しないとしても、全体的に婚期が早まれば国の人口が増える事になります。但し、ここでの夫婦は、全員に生産性(しょうさんせい)が有る事を前提にしています。

 何やら、社会保険料を値上げして「非正規労働者らを対象にする子育て給付金制度」を検討しているようです。これが「社会保障」の一環ならば、それも良しですが、「異次元の少子化対策」だと言うので笑ってしまいますww

 

 


 政府や国会議員が普段から「企業の内部留保が過剰である」と言っているのなら、「非正規労働者」を減らして賃金の高い「正規雇用に移行しやすい制度」を検討するのが先である事は明らかです。

 日本には、「子供手当」てが欲しくて結婚し、子供を産む親はあまりいないと思います。「男女共同参画」などで「すべての女性が輝く社会」「女性活躍加速のための重点方針」などの標語は兎も角、殆どが「女性の賃労働(政策上では家事・子育ては労働と見做されていない)」が前提になっていて、そこには「安心して(早期)結婚出来る」と言う話は書かれていないようです。

 どうやら、日本の「少子化対策」とは、人口減少を止める政策では無く、少子化が進んでも政権を維持できるようにする対策のようです。つまり、社会保障の最大の受益者である老人優遇の「選挙対策」と言えます。