自由が丘と云う街を歩いていると覚える息苦しさは己が劣等感ゆえなのだろうか。
私にとっては非常に不自由な街で、なかなか足が向かない土地であるが長らくの課題店のために今日は久方振りに赴く。
この星火…純然たるラーメン屋ではなくラーメンも提供する割烹の趣で、夜はラーメンのみの注文はお断りと云うハードル。
ランチメニューも単品のラーメンではなく黒米のおにぎりと小鉢二品が添えられる膳スタイル。
配膳を待つ間も冷えた玄米茶が爽やかに心を擽り期待値を上げる。
店の雰囲気は折り目正しいが、居心地は決して悪くない。
迷った挙句に頼んだのは塩ラーメン、澄み切ったスープとも異なる佇まいだが押し付けがましさのない品格が漂う。
意外にも背脂まで薄っすらと浮く塩スープを一口啜り、私は心の中でひざまずいた。
驚きはなく唯々美味さに屈服する…。
匠の大山鶏をベースに魚介で随所を直線的な味わいに仕上げ、背脂で膨らみを持たせながら、生海苔が溶け出し磯の揺蕩う風味を演出、そこにフライドオニオンが香ばしさを加える…その全てが渾然一体となる味覚の交差点を一瞬で駆け抜ける恍惚。
具材についても何一つとして過不足のない布陣…肉厚でありながらホロリ蕩けるチャーシュー、絶妙な歯応えと味わいの穂先メンマ、一口サイズでプリッとした食感の味玉ウズラが三ヶ、そして旨味の中に静かな苦味が混在するシャキッとした青ザーサイ。
麺も敢えて主張し過ぎず洗練の二文字を織りなす三河屋製麺製の細ストレート。
計算され尽くしていながら嫌味のない調和がもたらされ、旨味の彩りから壮大な景色が広がる大いなる感動。
此処にもまたラーメンに於ける完璧が存在した。
店内連食などと云う無粋も今日ばかりは控えて余韻に浸る。
つまり再訪するしかない。
よもや自由が丘に対する苦手意識なんざ完全に氷解である。










