ハードボイルド×ブルース×萩原健一。

▼笹沢左保の欲望とエゴが入り組んだ世界観は『木枯らし紋次郎』同様、映像化するとハードボイルド的に主人公の孤独感が切なく際立つ。少し甘めの採点だけど、『死人狩り』は傑作だと言ってしまおう。▼舞台となる福島県の険しく荒涼と広がる岩山の光景は、喪失感に囚われた人間の心を映すようでロケーションの効果が素晴らしい。 家族を失くした萩原健一は荒んだ生活の証である無精ひげのままで、捜査にのめり込む。うらぶれた刑事像が魅力的である。普通なら復讐や怒りに燃えそうな設定だが、萩原健一は徹頭徹尾抑制して演じ切って深い印象を残す。抑えすぎかも知れないが、これによって黙って警察装備を全て捨てラストが見事なまでにはまるのだ。▼萩原のストイックな行動を支えるのは全編に流れるブルースだ。熱気をはらみながらもどこか切なく、光と影の世界に滲んで溶け込む。不可解な事故の犠牲者である妻、その過去を探ることとなった彼の憂鬱=ブルース。そのブルースを抱えながら、彼は歩み続ける。主題歌『雨に濡れてる・・・』のタイトルのように、全てが終わった後、濡れた歩道をひとり歩く萩原健一のイメージ像がフッと浮き上がり、いつまでも心を離れない。