天使の一撃。
▼入江一帯を舞台とした本作は『13日の金曜日』に影響を与えたという。確かにほとんど同じような殺害シーンも出てくる。あちらが湖畔に対して、こちらは蛸が游いでいるから海なのだろうが、自然の開放感は無く、かなり陰気だ。ここは世間から隔絶された閉ざれた空間、小宇宙なのだ。この閉鎖的空気感覚もクリスタルレイクに通じるはずだ。▼感情移入することのできない登場人物ばかりの『血みどろの入江』には探偵役は存在しない。エロチシズムはあるが愛はここには無く、欲望や復讐に取りつかれた者たちが織り成すものは殺すか殺されるかでしかない。まさに地獄絵図みたいな人間模様は、中川信夫の『地獄』を思い起こさせる。これは信じがたいまでの殺人の連鎖の物語なのであり、その果てに欲深き者は全て消えてなくなるのだ。天使たちを残して。▼本作はストーリーだけ追えばひどく殺伐とした内容でプロットも現実離れしているという非難も逃れなれない。人間関係が整理つかないまま若者たちの殺戮が始まってしまい混乱もする。しかもその犠牲者だってそれほど内容にも絡んでこないのだ。だがマリオ・バーバ監督の残酷美学によってデカダンな殺戮映画が完成したのだ。右往左往する罪人たちを待ち受ける天使の一撃は諸行無常すら突き抜け神々しい。