アル・カポーン。
▼悪党を美化しないで描くことのひとつは、カッコよく銃を撃たせないということかもしれない。主演のロッド・スタイガーがハマリ過ぎの本作では、アル・カポネがトンプソン機関銃を乱射したりしない。しかし、野望の人生ゲームに勝利することにおいて手段を選ばない彼は実に精気に満ち、本気で世界を手に入れようと考えているよう見える。映画はカポネのカリスマ性は否定はしていないのだ。▼ギャングを誕生させる不幸な境遇などの同情的なものを一切拒否する本作はモラルにおいて悪党を批判する隙さえ与えない。これはアル・カポネの戦争の物語であり、いわば戦国武将と同じなのだ。▼苛烈に生きた織田信長が本能寺で一瞬で散ったように、カポネの栄光もあっけなく終わりを告げる。脱税で収監された彼に待っていたのは、娑婆での恨みを持つ囚人たちにリンチだ。看守に救われたものの、半殺しで血まみれの彼にかつての顔役の面影はない。その醜態に彼の末路がナレーションで語られる。ラストシーンはギラギラと豪腕を奮っていた、かつてのカポネの勇姿だ。盛者必衰とはこのことだろう。