『龍虎風雲』

▼原題は『龍虎風雲』。響きも字面も格好いい。おそらく邦題は、その意味を訳したものだろうが、歯切れが悪い感じがする。▼サックスがフューチャーされた音楽を含め、スタイリッシュで垢抜けた印象があった本作だが、今回見直して観て、そういうイメージの大半はチョウ・ユンファから発せられているように思えた。明るさや軽妙さと瞬間の凄味のコントラストだろうか。▼リンゴ・ラム監督はワイルドだが、ジョン・ウーのような暑苦しはなく、潜入捜査官の過酷な運命を冷徹に描き切る。ユンファの陰影のあるキャラクター造形も平凡なギャングドラマから救っている。本作のカメラマン・アンドリュー・ラウが後に手掛ける『インファナルアフェア』の原型がここにあるのだ。▼本作はまた『レザボアドッグズ』の下敷きでもある。共に終盤から運命か狂い出す怒涛の展開は甲乙着けがたいものがある。『レザボアドッグズ』の一種の心中もいいのだが、力尽きたユンファの魂が風に吹かれてゆく本作のラストも切ない。