ネタバレ無し。
▼幻の映画との異名を持つ本作、エンディングで製作者が結末は他言無用だと釘を刺すのも一因に思える。この映画、少しでも話せば面白味が減じる性質がある。▼昔観て、結末部分は頭に残っていたものの詳細は忘れていた。そうすると前半は少しまどろっこしく感じた。だが、クライマックスにかけての現実崩壊さながら迫力は見事だ。でもこの映画に二回目はないような気がする。▼見知らぬ人物が、ある日突然親族を名乗って来訪する不条理。この物語、人物の役割続柄を変えてみるだけで様々なバリエーションが生まれる汎用性がある。実際似たような作品をみたことがある。シンプルに男を女に変えるだけでドラマの重点はガラリと変わるだろう。▼現代の擦れた観客、感のいい人にはこの映画の仕掛けに察しがついてしまうかも知れない。とはいえ、アン・バクスターの不安を醸し出すサスペンスは見事だし、ワインディング爆走シーンの編集も侮れないレベルの迫力の映像である。乾いた空気感が漂うスペインのロケーションもこの異様な物語の舞台にふさわしい。映画が放つ品格ゆえに、謎そのものがどこか美しい悪夢のような、そんな印象も残る。