笑わない警官。

▼原題は『笑う警官』である。皮肉と謎めいた含みのある簡潔なタイトルに、『マシンガンパニック』なんて安いアクション映画の邦題がつけられてしまったのは決して間違いだとは思えない。▼『マシンガンパニック』は仮借ない暴力の迫力に満ちたアクションと地味な足取り捜査のコントラストがスモーキーな画調で描かれる。日常を一瞬にして切り裂くマシンガン襲撃の恐怖は確かにこの物語の基盤にあるのだ。▼ウォルター・マッソーとブルース・ダーンの偏屈コンビには映画的アウトロー刑事の華やかさは全くない。マッソーの抱える疎外感、ダーンのある種警察への不信感は現実的だ。リアルな重い刑事ドラマゆえに「笑う警官」は出てこないのか。▼原作のストックホルムから、フラワームーブメントの名残りがあるサンフランシスコへ舞台は移されたものの、どこか性の文化の緩やかな空気感は共通してくるかも知れない。そこに人種間の対立や銃犯罪のテロリズムなどアメリカの抱える問題も混ざり合う。モラルのタガがいつが外れてもおかしくない危うさが『マシンガンパニック』にはあるのだ。▼ 犯人逮捕には、ダーティな手段も辞さない刑事たちだが解決したところで達成感は訪れない。事件は彼らを通り過ぎてゆく。署に帰った彼らを待つ、全くの人違いの男が連行されてくる苦いユーモアに、ただ重い疲労感がのしかかり、笑う気力さえ起こらない。