粒揃い。
▼某サイトのレビューでは、今の眼で観ると面白くない、怖くないだとか書かれてしまっているけど、どれもクオリティの高い、水準越えの出来を誇っているように思う。定番のものもアレンジが加わっていて魅せるが、他の余り取り上げられない怪談などは傑作と言っていいのではないだろうか。▼俳優、特に女優陣は皆素晴らしい。『日本名作怪談劇場』はどれもかなり濃厚なエロチシズムに溢れてていて、それが単なるサービスではなく、物語にリアルな力強さを与えているように思う。『かさねが淵』の片桐夕子の身体を張った熱演は見事だ。その監督倉田準二のもう1本『玉菊灯籠』の結城しのぶの美しさといったら凄絶と言いようがない。倉田監督の細やかさが隅々まで行き渡って女郎の哀惜が奏でられる格調高くも恐ろしい傑作である。▼岡本綺堂原作による『利根の渡』は座頭の執念の物語で、スーパーナチュラルな形で復讐は叶えられるが、中身は異様な人間のドラマである。時代劇が身分差別と男尊女卑の世界だと嫌という程思い知らされるこのシリーズだが、虐げられた者の怨念無念を霊に託す庶民感情が怪談にはあることにも気付かされる。▼『鰍沢』はあの世とこの世がシームレスで境目なく繋がる。この世界観では幽霊には性別すらないことがピーターによって妖艶に描かれる。その幽霊は道行きの友と昼間から旅路をゆき、彼=人間の復讐を助けたりもする。怪談とは恐怖だけではなく森羅万象全てを呑み込む奇蹟体験なのだと思える。▼田中真理のこの世の者とは思えないほどの美貌が切なさを醸し出す『高野聖』は脚本の良さに演出が追いつかなかったのが惜しい。修行僧を襲う鮮血に染まった滝の幻想が、カラフルな紫の絵の具混じりの桃色の滝では恐怖半減だ。幻は生々しいなければなるまい。不幸にも田中真理が生まれ持ってしまった色香が男たちを狂わせる。欲望に取り憑かれた人間こそ何よりも恐ろしいのかも知れない。