夏子 ・イン・ ワンダーランド。
▼脚本家桂千穂氏自らその変態性を自負する本作『昼下がりの女挑発!!』なのだが、実際に観てみると思っていたものとは大分違う。あらすじを読むととても理解しがたい、したくない話なのだが、映画そのものは陰湿な感じはないのだ。主人公八城夏子はひたすらひどい仕打ちに会うのだが、不条理過ぎて現実離れしているように見える。どこか乾いた感覚が一般的ポルノのイメージとは異質に思えるのだ。許容しがたい暴力の連鎖が描かれるこの映画にどこか清潔感さえ感じるのは、私だけだろか。▼ふとこの映画は『不思議な国のアリス』のように思えてくる。かといって私はアリスをおぼろげにしか知らないので、あくまでイメージに留まるのだが。あるアクシデントで出会った同性愛者の青年に導かれるようにアンダーワールドに堕ちた彼女の地獄巡りは、実は夢なのかも知れない。夢だと思うと不条理さが納得出来る。不思議の国ならばなんでもありなのだ。性をめぐる冒険の旅は、彼女に人間としてもある変革をもたらすのだが、ラスト彼女を待つのは夫の浮気現場という、あまりにもどうしようもない『現実』なのだ。▼しかし、私が感じた清潔感も八城夏子という女優のイメージからかもしれない。個人的には『探偵物語 』の「暴走儀式」での力強い光を放つ瞳に忘れがたい印象がある。上手いとは思わないが確かな意思が伝わってくるのだ。例えば、ロマンポルノの初出演作での、夜な夜な真のエクスタシーを求め彷徨うヒロインである。彼女は独自の犯罪美学を持って獲物を求める蟹江敬三と同種の人間に見える。本来は被害者と加害者の関係である二人なのだが、そのストイックな行動姿勢はどこか求道的な輝きさえあるのだ。▼本作の八城夏子も、やはりへこたれない。役柄上も実年齢も少女は過ぎてしまってはいるが、無垢を含んだ瞳の輝きはフィルムに焼き付いている。