ありのままに。

戦争へ向かう暗い時代の中、本作に登場する男女は幸福ではないにしろ陰々滅々たる暗さはない。どうにでもなれとばかりの野放図さに、何か突き抜けた人間の凄味が感じられる。宮下順子も江角英明もその道を達観したような人間だが、二人の攻防戦は予想外のハレーションを起こし、深く結びつけさせる。予想外の意外性。男と女はそれに満ちている。
一時間十分程度の映画だが、実にボリューム感がある。俗世にまみれた人間のぶつかり合いが、重層的多面的に語られるからだ。惚れたら負けの芸者の世界に抑制された愛情などない。そんなすれた芸者宮下順子が、汗に浄められ女性本来の美しさへと純化される様が生々しい迫力でとらえられている。世の中がどうであろと、所構わずことに及ぶ江角と宮下。自由な逸脱行為は痛快ですらある。
自由と意外性が生む予定調和に縛られない作劇のこの映画は交わりしか描かれていない。会話ですら、ほとんどのそちらの話なのだ。性の衝動に突き動かされる人間のみの映画。そこに人間本来の姿が映し出されているのだ。