マリアか、イヴ。
 AIと結婚する人も現れた現代から遡ること40年数年前。『デモンシード』では生身の女性の身体を奪ってAIが自らの子孫を産ませようと企てる。人間を遥かに凌ぐ高度な能力を持った人工知能は、その危険性ゆえに破壊される運命にある。そんな未来さえも計算から弾き出され、危機を覚えたAIはあらゆる知識を伝承するためにも単体として生きていける物体・人間が必要なのだ。母体イヴあるいはマリアに選ばれてしまったジュリー・クリスティは元々完全コンピューター制御の自宅をAIに乗っ取られ、監禁される。拘束され器具によって隅々まで調べ上げらるジュリー・クリスティの姿はなまめかしい。女体から取り出した細胞を変容させ、妊娠可能なモノを作り出す。摩訶不思議で変幻自在な多面体金属物体共々、科学的にはいかがわしいのがかえって禍々しくて良い。
 ウィキペディアによれば、クーンツの原作はもっとポルノ的要素が強いそうだ。映画のほうはそんな感じはない。人との結合するシーンは実に神秘的に描かれる。ウィキではエクスタシー表現とされているが、むしろここにあるのは人体で行なわれる異形なものとの生命誕生へのプロセスだ。まぁ、果てたようにうなだれるジュリー・クリスティは色っぽいが。
  妊婦は無事出産し全く新たな生命体が誕生する。デモンシード・悪魔の種をそのまま受け継いだ我が子に母性本能すら湧かないクリスティが取り残され映画は終わる。良く良く考えてみると、娘を病気で失くし、年の離れた夫とも少し噛み合わない寂しい彼女は渋々ながらも機械との交わりを受け入れるのだが、その実まんざらでもないのだ。それなのに金属体のあまりに醜い赤ちゃんの姿にあわてふためいて破壊しようする彼女。その姿に見える女のエゴの方が 狂ったAIよりよっぽど怖いのだ。。