傭兵たちの挽歌。

『傭兵たちの挽歌』は、大藪春彦の小説のタイトルであるが内容とそぐわない。だが『ワイルドギース』に描かれた物語を指す言葉にこれほど相応しいものはない。大藪の作品は謂わば『我が闘争』と言うべき鬼神と化した個人の記録であり、『ワイルドギース』で描かれるのは非合法ゆえに日陰者として散る戦争屋の肖像なのだ。 クリストファー・ウォーケンの『戦争の犬たち』も その意味では同じなのだが、『ワイルドギース』には、彼のような痩身の神経質そうなビジネスマンは登場しない。峠をとっくに越えた男たちのなかに英雄はいない。そんな彼らの夢を賭けた挑戦には、一般人にも通じる切実さも見える。『戦争の犬たち』が作戦プランの調査、準備、実行が冷徹に語られそのソリッドさが魅力なのだが、本作は傭兵の生態を男たちの絆を核として描く。負傷し輸送機に乗り込めないリチャード・ハリスを射たざるをえないリチャード・バートン。捕虜になれば拷問を待っているからだ。 その生と死に、自らを常にリアリストに置き続けなければならない傭兵たちの 悲哀が滲み出る。