一人三役とか二人で一役とか、やって欲しかった。

陰惨な殺人劇にブラックコメディが香る、例えば『フレンジー』あたりを目指して製作されたのであろう本作だが、くすりとすら笑えない。映画と同様に愛する人を寝とられたデ・パルマ監督の自画像が主人公であるためむしろ悲しく見える。失恋男のねじれた性のファンタジーが円を描いて現実離れの暴走をするラブシーンの圧巻のカメラワーク。だが華麗なテクニックに騙されてはいけない。AV女優メラリー・グリフィスと抱き合いながら死んだ美女を思い浮かべる男の未練が不憫でもあり滑稽でもあるのだ。監督が同類の主人公を嘲笑う構図である。デ・パルマの分身であるこの男は事件解決後も成長はしない。俗悪エロホラー映画で、金の為に裸の女性の胸をひたすらまさぐるこの主人公の姿こそ、まさしくに監督の「ボディダブル」だ。
『裏窓』『めまい』をベースに『サイコ』『ダイヤルMを廻せ』が散見する。見ず知らずのサイコパスは『見知らぬ乗客』風だし、『マーニー』のヒロインの娘も出ている。まさにデ・パルマのヒッチコック劇場なのだが話そのものにもう一工夫欲しい。描かれていないが美人妻は、恐らく夫と組んで主人公を罠に掛けるべく誘惑したのだから、偽の殺人を見せておいて実際に殺されたのはまたまた別人だったり、あるいは、ダブルを演じたメラリー・グリフィスが企みに気付いて反撃を試みたり、はたまたドリル男をもっと暴れされたり。犯人自体に目星がつく分、劇的なサプライズが欲しい。クライマックスの盛り上がりが乏しいのだ。
本作、『レイジングケイン』『ファムファタール』など疲弊したデ・パルマのリハビリの為のような作品は完成度度外視に好き勝手やって微笑ましくさえある。観客に愛されなければこうはいくまい。まだまだ作って欲しい。