神を恐れぬ映画監督。

将来大統領となる男が世界を破滅させるという予知を得た男は、未来を変えるべく銃を手に取る。映画『デッドゾーン』クリストファー・ウォーケンである。
現実では「トランプの1ミリ」ともいうべき僅かなところで狙撃は失敗した。面白いのは、この命拾いが逆に狂人を、みずからを神の子と思い込み更なるモンスターに変えてしまったことだ。もし、狙撃者がウォーケンのように予知超能力者だとしたら、失敗により皮肉にも現実化を加速させ、むしろ最悪の手を選んでしまったことになる。ウォーケンの狙撃は失敗したものの最悪の未来を回避させたが、現実にはそんな希望すらない。まさに小説より奇なりなのだ。
この世でただ独り異世界的価値観を持つクローネンバーグの映画の男たち。そんなアウトサイダー的キャラクターは『デッドゾーン』の主人公も同様である。己れの暗い思想を隠して生きる姿が常に孤独な佇まいで描かれる。監督の思想、グロテスクな世界観は危険であるのが分かりながも引き込まれてずにはいられない。悪夢の具現化という映画のいかがわしい魅力が、後ろめたくも抗しがたく、妖しく輝くのだ。