あなたが目撃者。
 映画から立ち込める不穏な空気で観る者を不安の世界に引き込む『わたしは目撃者』は、ダリオ・アルジェント監督の煽り演出が 効果的というか、過剰である。主要3人以外の印象の薄いキャスティングもあって観客の犯人当ての思考を混乱させるほどだ。
 だが、その真犯人は意外ではあるが、インパクトには欠ける。カール・マルデンの盲人と少女が探偵役と思いきや、助言役であり、謎を解くのは新聞記者である。ただその新聞記者のキャラクターが弱く魅力にも欠ける。カール・マルデンの盲人設定が面白い分もっと物語の中心で動かすべきだろう。後で思い返すと犯人の動きもかなり都合がいいようにも思える。小道具に拘るフェチ的物撮り描写が緊迫感を盛り上げるのは流石であるが。
  見終わってまず感じるのはこの邦題が内容とそぐわないことだろう。確か犯人の手を偶然撮影てしまったカメラマン、真相に近づいた女性など、次々に命を失うが、映画の冒頭暗がりで犯人の車を目撃する少女は、誘拐され命の危険にもさらされるが、それはあくまでマルデンたちへの脅しに過ぎない。つまり、この邦題が指すのは映画自体が観客に目撃者であることを強いいることなのだ。アップでとらえた犯人の見開いた瞳、物陰に潜み暗躍する犯人視点のカメラは、探偵役である観客を同時に目撃者に仕立て上げる。おそらくその作用は、監督が意図したものより大きく、要らぬ詮索が観客に促され観ていて疲れるのだ。真犯人に天罰のピタゴラスイッチは本作でも起動するものの、あの独特の殺人美学が開花するのは、『四匹の蝿』まで持ち越されたようだ。