あなたもスパルタカス。

中央政権に戦いを挑んだ奴隷スパルタカスの反逆の物語は、今こそ観られるべきであると思う。不当な扱いを受ける者は立ち上がらない限り永遠に屈辱から逃れられまい。挑戦しなければ未来はないそうだが、人が挑戦すべきはのしかかるその圧力なのであり、勝ち取るものは金銭などより遥かに尊いはずなのだ。
『スパルタカス』を、キューブリック監督が自作と認めていないが、反権力の点で他の傑作群と共通している。タブーに挑戦することが芸術家の使命だとしたら、彼のフィルモグラフィがそれを見事に証明している。しかし、『スパルタカス』は、それらの意地の悪いブラックユーモアの冷たさはない。従来の書き割りの史劇とは明らかに違う、人体破壊の暴力と死の戦場をリアルに描いた本作なのだが、キューブリックの他の作品と違って人間の体温も感じさせるのだ。カーク・ダグラスとジーン・シモンズの愛の表現は控えめだが肉体的であり、何よりそこに喜びがあるのがいい。この映画のラストショットのカメラアングルは、愛する妻子を見送り絶命するスパルタカスの見開かれた瞳の視点であり、その視線が指す先には未来への希望が見える。そして監督は反対したがあの「俺がスパルタカスだ」のセリフに託された、同志への揺るぎない信頼、圧倒的強者に立ち向かう勇気の感動は間違いなく本物なのだ。つまり自由という尊厳を賭けての闘いをこれほどダイナミックに描いた映画が、人間的でないはずがないのだ 。奴隷であることを拒否した、その抵抗に心動かぬ者などいるはずがない。