夜霧に散った負け犬のブルース。

漢脚本家である國弘威雄のファンである。『幕末残酷物語』『やさぐれ刑事』など男の情念や弾ける激情が情感たっぷりと描かれるからだ。手掛けた『必殺仕掛人』第二話は、殺しの世界に墜ちていった梅安の情念と暗殺者たちの無情な世界観が見事に描かれたシリーズ最高傑作である。回想形式が効果的な本作も、石原裕次郎というスターを復讐に燃える正義の英雄とせず、あくまでひとりの男として 描く。野村孝監督の移動撮影による 情感溢れる演出も素晴らしい。ポスターの大人の洒落たムードはここにはなく、転がりながらも必死に生きる男女の姿に心を射たれる。失われたものは戻ってこないと知りながら仇の前で、己れの過去をひとり喋る石原裕次郎。その殺気漲る眼光の奥に、夢を踏みにじられた者の哀しみがはっきり刻まれている。『夜霧のブルース』を始め、國弘威雄の脚本は苛酷な生を乗り越える者の闘いの記録 なのだ。