SF+ハードボイルド+哲学+政治+詩=?

 ゴダールの映画は語彙が難しい、よってつまらない、だから苦手、ひいては嫌い。そんな負の連鎖を経験した人は私だけではあるまい。本作を『ブレードランナー』の原点と飛びつき、見事に肘鉄を食らった私は、ゴダールを避け、ゴダールを称賛する人にコンプレックスを覚えた。インテリしかわからない、というか私には知識が圧倒的に不足していたのだ。ひさびさの鑑賞となった今回には補うものがある。細川氏による素晴らしい解説のブックレットである。見事な労作である。それでもついていきかねるところが大分部なのだが。だけども、本作の魅力は、ハードボイルドな奴が、未来都市迷宮を跋扈する姿に極まると言ってしまってもいいのではないか。

 本作で未来都市の舞台となった実在のパリは、驚く程乾燥して描かれている。生気のないゴダールのディストピア。今はもう消えた未来の街だ。しかし、AIの発達で『アルファヴィル』は回避された未来ではなくなった。点滅するライトからのダミ声がこれから訪れるかも知れない未来への警告のように響く。