こんな画、見たことありますか?
  鈴木清順映画は、「普通」ではない。そこそこ魅力なのだが。奇抜な色使い、意外性溢れるキャラクター造形、その劇的で大胆なギミックは常に人を驚かせる。驚きは娯楽の大事なところである筈。だから彼の美学は娯楽であると思う。後年のアート映画よりも、日活プログラムピクチャーに押し込まれた「芸術」の方が鮮烈で、今なお新鮮さを失っていない。
  例を挙げれば上記の、透明なガラス板に押し付けられた宍戸錠を、正面からガラス越しにとらえられたシュールなこのショット。同時にナイフの指切りリンチの生々しさが鮮やかに映し出されている。『野獣の青春』は毒々しい暴力の華が全編飾り付けられている。血を吸う凶器のリアリズムとその残酷なユーモアによって、本作は純正ハードボイルドに限りなく近づいた。そして清順はそれを超えた、と言ったら大袈裟か。川地民夫の殺人機械を始め、主人公宍戸錠は己れの手を汚さず殺人を仕掛ける 。暴力絵巻の最終章は、絶対的不信の境地であり、言ってしまえば向こうの側の世界だ。その死を弄ぶ者の末路は、『ツィゴイネルワイゼン』『陽炎座』にも通じているのかも知れない。