ガンマニアには名作。

国境を跨ぎ、一人の女をめぐって対立し合うレンジャーと麻薬王。そこに麻薬王潰し作戦命令を受け、書類上「死者」になった元兵士たちの非合法部隊が乗り込んでくる。全編乾ききった銃撃のつるべ打ちは素晴らしいのだか、三角関係の恋愛描写はなんともジメッとぬかるんでいる。マリア・コンチータ・アロンゾをめぐる、煮え切らないニック・ノルティと粘着質なパワーズ・ブースのドラマは、機械的に作戦を遂行しなければならない非合法部隊のプロットとは水と油である。原案ジョン・ミリアスも評価は否定的なのだが、本作には見捨てられない魅力もある 。
まずマイケル・アイアンサイド、ウィリアム・フォーサイス、パワーズ・ブースとご贔屓役者揃い踏みなのが嬉しい。特にマイケル・アイアンサイド。彼の汗で脂ぎった禿げ頭見るため円盤買ったといっても過言ではない。頭脳と戦闘力を頼りに、己以外全てを欺き邁進するアイアンサイドは『ダブルボーダー』の人間のなかで最も輝いているのは間違いない。血まみれの壮絶な死に様も圧巻である。クライマックス、アイアンサイドと彼の裏切りを知った部下たちと麻薬王の私兵との三つ巴の決戦となるのだが、もっとノルティとブースも絡めた、よりカオス展開までなんとか盛り上げて欲しかった。ふたつの物語の合流を上手くいかせるにはそれが必要だったと思うのだ。そのために非合法部隊が殲滅されても心が揺さぶられないし、結果本作に女の取り合いの馬鹿映画というのネガティブな印象だけを残してしまった。ということはヒロインの造形の不鮮明さが一番の問題なのかも知れない。ノルティとメキシコ人女性マリアとの間の根深く横たわった人種問題の亀裂は、彼女にブースの執着に無自覚にもなびいてしまう隙を作ってしまったのだ。その情熱のなかで揺れ動く女の気持ちはまったく無視され、単なるアバズレ女と描いてしまったウォルター・ヒルのマッチョイズムはおよそ褒められたものではない。