情熱と暗殺。
 雪の投票日。出歩くことが出来ない日曜日。何気に本作品の封を開け、鑑賞した。その夜、とてつもなくでかいものが誕生した。ふと革命を誓い巨大な力に立ち向かった者たちに思いを馳せる。『日本暗殺秘録』で描かれるのは 、暗殺行為の肯定ではなく、そこへ向かう人間の情熱の全肯定である。左右は問題ではない。刃を叩き込み、引き金を引かせる情動。暗殺の瞬間の輝き。それをとらえ描くことが、この映画な一番大事なところだと思う。
 『日本暗殺秘録』は笠原和夫脚本・中島貞夫監督のむせ返るほど濃く熱いドラマだ。メインの事件に入るまでの暗殺パノラマで、すでに観客の腹ハ分まて鮮血が流し込められる。そこから中島貞夫監督作品屈指の熱量で血盟団の小沼の挫折と怨念の革命が語られる。終盤の226事件はモノクロ的な画で描かれるせいもあって血盟団ほどの熱量を感じない。変革に対する思いには変わりはないのだが。思いをすくいきれていないということか。暗殺に走る狂熱のエネルギーは、最終的にそのまま時空を突き抜け現代に 放射される。不謹慎で無責任ではある。それも結局は雲散霧消に散ってしまったが。
 本作品に戦前日本を批評的に見つめる俯瞰的リアリズムの視点はない。しかし、リアリズムより革命のロマンに燃える中島の視点を評価したい。暗殺に成功しようと、暗殺者は成功者にはなれない。生死を問わず敗残者として正史の藪の中に消えるだけである。だが彼らは一瞬の勝利に賭けた。暗殺=夢の輝き 。それゆえに『日本暗殺秘録』という映画は永久にギラギラと輝き続けるだろうと思う。