ローレンス・ハーヴェイの娘。

本作のモデル、ドミノ・ハーベイは映画の完成直前に亡くなった。自殺ではないそうだが、自分の人生がこんな嘘だらけのデタラメに描かれれば死にたくもなるってものだ。監督したトニー・スコットはドミノの 友人を自称するが、彼にとって彼女はセレブ生活からドロップアウトしクレイジーなジャンキーに過ぎないのだろう。ロックスターに憧れていたトニーによってドミノとその人生はギンギラに塗り固められる。実際のドミノは日に当たったことがないようなほど異様に白い肌と寂し気な眼差しをした女性だ。映画のキーラ・ナイトレイのギラギラな眼をしたワイルドな 娘ではない。バウンティハンター、マフィア、FBIが絡み合い現実離れのプロットは異常なスピードで膨張し、最終的に貧しい子どもたちだけか幸せなる。取って付けたきた偽善。映画同様にドミノ・ハーヴェイはコインの表裏で人生をはかってきたそうだ。偽善の裏は誠実だというなら、誠実なんてものはこの映画にもっとも欠けている言葉だろう。
監督本人も亡くなった今、全編埋めつくすドラッギーな映像の叫びがただただ、空しい。