VHS版ジャケット。デザートイーグルを持つ女神。

夜の浜辺を駆ける一人の美女。水着姿のまま手にした大型拳銃デザートイーグルをブッ放す。東映Vシネマながら映画館で流れたこの予告編の衝撃から30年経ってようやくDVDで鑑賞することになった。発表当時評価は高かった記憶がある。正直その時だったらもっと面白く観れただろう。やはり全体が古臭く見える。私的には本編にデザートイーグルは登場しないのが驚いた。主人公紫苑の愛銃はDVD版ジャケットで握られているようにベレッタなのだ。マグナムを持つ美女のイメージは脆くも崩れ去ったわけだが、久野真紀子の文字通りに身体を張った演技は素晴らしい。まさに限界ギリギリの大熱演だと思う。裸体をとらえる小沼勝監督の演出もねちっこく熱い。反面、アクションシーンは熱量不足で緊迫感に欠ける。カメラは仙元誠三なのに。室賀厚監督『ワイルドビート』と同じ1994年制作。ドンパチ愛の違いですね。一番引っ掛かるのは、紫苑の恋人であり、ジョニー大倉ではミスキャスト感が。紫苑はカメラマンと恋に落ちて組織から逃れる。彼女のなかに眠る何を呼び覚ますのは、もっとギラつきながらも清々しい純粋な若者でなければならないじゃないかと思う。年上の包容力だけでは本能は目覚めまい。ひとりぼっちだった紫苑の心を解かすものは街をふらつく野良犬だけであり、そいつはまだ可愛げを残したチャーミングな奴でなければならない。つまり似た者の孤独がぶつかった時に何かが弾けるのでははないか。均整のとれた身体とはアンバランスに時々少女のような未成熟な心の部分を覗かせる久野真紀子=紫苑を、私はそう見た。自分の中の起こった革命に目覚めた女性たちを描いてきた日活ロマンポルノ。その流れの最終地点のひとつとも言える『XX』シリーズ。世紀末だからこそ狂い咲いた妖しき暴力的作品郡は今なお魅力的に輝いている。。