『バイユーブルース』
 音楽についても書いてみたい。ブルースマン、クリフトン・シェニエ。生誕100年記念。ルイジアナブルースでありアコーディオンで奏でる音楽、ザディコの王様。シェニエはライブ盤含め数枚手元にあるが初聴き。収録曲数が12曲と少ないが、ジャケットのイラストが秀逸。夕陽が沈む湿地帯にたたずむ掘っ立て小屋とペリカン一羽。映画『サザンコンフォート』ではこんな場所が舞台。壮絶なマンハントを潜り抜けある集落に逃れてくる主人公二人組。そこで流れる音楽がザディコの源流ケイジャン。死線をかいくぐった二人に広がる異世界。街のいたる所にダンスミュージック・ケイジャンが溢れかえって人々を躍動させている。プリミティブな異文化に触れ現代人の野性が目覚めたのようなクライマックスが圧巻である。本盤のクリフトン・シェニエのブルースは荒々しくはなくポップでダンサブルなインストが印象深い。初期録音だけに若さを感じさせる弾けるようなヴォーカルもいい。何より変幻自在なアコーディオン演奏が楽しい。