1 はじめに
NPO法人ふるさと回帰支援センターが運営する「ふるさと暮らし情報センター」(東京都千代田区有楽町東京交通会館内)が、来場者を対象に、ふるさと暮らしに関するアンケートの結果を発表した。「田舎暮らし希望地域ランキング」によると、長野県や山梨県は上位にあり、安定した人気を保っている。八ヶ岳山麓は、その地域の一つであろう。
長野県と山梨県に跨る八ヶ岳連峰の山麓には、なだらかな斜面が広がっている。都市部に居住し、この地域への移住を考えている者にとって、当地域の気候は魅力の一つにあげられるのではないかと思う。八ヶ岳連峰西麓の長野県原村や南麓の山梨県北杜市(大泉)の気候と似ている地域を都市部と比較する。
2 雨温図から
雨温図は、気象庁のデータから作成した。
赤線の折れ線グラフは、月ごとの「日最高気温」。黒線は、「平均気温」。黄線は、「日最低気温」をそれぞれ示している。データは、1981~2010年の平均である。
青の棒グラフは、月ごとの降水量である。データは、1985~2010年の平均である。
長野県原村と北海道函館市は、年平均気温が「9.1℃」と同じである。
原村は、標高1017m、内陸にあることから寒暑の差が函館に比べて大きい。冬は長く低温で特に真冬は非常に寒い。気温の年較差は大きい。四季の変化がはっきりしている。針葉樹林と広葉樹林の混合林が広がる。
函館市は、緯度は高いが標高37m、海(津軽海峡)に面していることから、原村に比べて温暖な気候である。
・8月日最高気温の平均…原村27.6℃、函館25.8℃。
・1月日最低気温の平均…原村-8.3℃、函館-6.2℃。
・最寒月の平均気温…原村-3.2℃、函館-2.6℃。
・最暖月の平均気温…原村21.6℃、函館22.0℃。
「長野県原村と北海道函館市は、年平均気温が「9.1℃」と同じ」と上に書きましたが、2017年4月27日撮影した満開の桜の写真です。
原村のアメダス観測地点原村試験地のサクラと函館五稜郭のサクラです。
ケッペンの気候区分に従えば、原村は、亜寒帯(冷帯)に属する亜寒帯湿潤気候となる。また、函館は、温帯に属する温帯湿潤気候となる。
温帯と寒帯の境界の条件は、最寒月の平均気温が-3℃未満であることや最暖月の平均気温が、10℃以上22℃未満かつ月平均気温10℃以上の月が3ヶ月以下だからである。
原村は亜寒帯湿潤気候の(世界最)南限の一つであり、函館は日本における温帯湿潤気候の北限の一つである。函館は周りを海に囲まれているが、10㎞ほど北(内陸部)へ行くと亜寒帯湿潤気候となる。また、原村から10㎞ほど北西の諏訪湖方面へ行くと、標高も200mほど低くなり、温帯湿潤気候となる。
緯度の高低、標高の高低、海流の影響の有無などの理由で気候は特徴づけられ、植物の植生も変わってくることになる。
3 原村と比較した雨温図
原村と同様に標高が高く、内陸にある場所の例。軽井沢は浅間山山麓にあり、標高999.1m。北杜市大泉は八ヶ岳連峰の南麓にあり、標高867m。
標高が低く、海洋に近いところにある都会。東京は、首都圏そして日本の中心都市。名古屋は、中部圏の中心都市。
諏訪まで中央自動車道を使って行くとすると、東京と名古屋のほぼ中間に位置し、所要時間は2時間から2時間30分くらいである。第2東名高速道路やリニア新幹線が開通すると、諏訪までの時間距離はさらに近くなるかもしれない。
左図日本の気候区分について、中学校の社会科や理科の学習では6つに区分している場合が多い。
日本の気候の特色を把握するには、冬が捉えやすい。日本列島は南北に細長く、北海道と沖縄では、1月の平均気温も大きく異なる。また平地と山間部でも気温は異なる。
さらに黒潮や対馬海流といった暖流の影響もあり、同じ緯度でも海岸部の方が平均気温が高い。図を見ると太平洋岸の他、山陰地方にも比較的暖かい地域が広がっている。
また、右の図は、「次世代省エネルギー基準」の地域区分である。省エネの考え方は、昔からの日本の家では、すきまだらけで、断熱性が低く、暖房・冷房が高くつく、そのため、高気密・高断熱化による暖房・冷房にかかるエネルギーを少なくし地球温暖化を防止しようという考え方である。
住宅を建てるにあたって「Q値」をめやすにした場合、同時に「気密性能基準」である“相当隙間面積の基準値”と“夏期日射取得係数の基準値”を、地域区分に応じて満たす必要がある。住宅金融公庫では、次世代省エネ基準による割増融資が受けられる。
※熱損失係数をQ値とも言い住宅の断熱性能を数値的に表したも。値が小さいほど断熱性能が高いことになる。各地域ごとに熱損失係数(Q値)の基準が定められている。
気候が産業など生活に大きく影響するのは、農業であろう。
暖かい地方では、寒い季節でも、一定以上の気温が確保されているため、年中、作物が生育する。例を挙げると、日本海岸気候の地域は、冬の積雪が多く寒い地域であるため水田の単作地帯である。一方夏の降水量が多く、温暖な太平洋岸気候の地域は稲作と畑作-野菜や果物などを栽培している。(寒い季節でも、一定以上の気温が確保されているため、年中、作物が生育する。)