妻への告白

 

その日の夜、

子供達が寝た後、

リビングで妻と二人きりになった。

今しかない。

この状況を妻が作ってくれたのだろうということは薄々感じていた。

 

あのさ、今朝の話なんだけど、

今いいかな。

と切り出す。

 

待ってましたとばかりに、

うんうんと頷き、テレビの電源を消す妻。

 

 

私はすーっと息を静かに吸い込んで、

ふーっと吐き出した。

 

落ち着け、

落ち着いて話せと言わんばかりに。

そしてゆっくりと話し始めた。

 

 

実は昨日の夜、

映画を観ていたら殺人事件のシーンがあってね、

すごく緊迫したシーンでさ。

その時もいつものように映画の世界にのめり込んでて、

というか昨日はのめり込みすぎてしまった感じで、

完全に登場人物に感情移入してしまってたのね、

そうしたらさ…

 

言葉に詰まる。

ちゃんと言うんだ、

と頭を片手で抱えながら覚悟を決める。

 

そうしたら、

自分が人を殺してしまうんじゃないかという衝動に憑りつかれてしまって、

それからそれがずっとまとわりついていて頭から離れないんだ。

 

今も誰かを殺してしまうんじゃないかって怯えてる。

そんなことするわけないじゃんって思うよね。

けど、冗談じゃなくて、本当なんだ。

自分の中だけにしまっておけなくて、

隠しておけなくて。

 

自分が人を殺してしまうかもしれないなんて。

 

それもうちの子供たちをなんだ…

 

ここで完全に言葉が止まった。

 

妻は顔を強張らせて、

さすがに動揺した表情を見せていた。

当たり前のリアクションだ。

子供を殺してしまうなんて、

こんな衝撃的なセリフはなかなか聞くものじゃない。

この人は何を言ってるんだろうと思っているだろう。

 

ごめん。

頭がおかしくなってしまったのかもしれない。

どこか自分だけ違うとこに暮らした方がいいのかなとか、

正直、自分でもどうしたらいいのか分からなくて…。

 

ここまで言うと、言葉が出なくなった。

少しの沈黙の後、

 

「それは…」

ようやく妻が重い口を開けた。

 

 

→次回に続く…

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