「必読!つまらない演劇を観たあとのアンケートの書き方講座」   三遊亭はらしょう著


バカ売れ!100万部突破!

の予定・・・

というハウツー本を出す為、
どこかの出版社の方々に、是非、読んで貰い、書籍化を希望している。


元、演劇関係者の三遊亭はらしょうが、リアルな描写をします、
閲覧注意!

(心臓の悪い演劇関係者は、読まないで下さい)



☆第1章



まず、この章では、「困るアンケート」についてお話いたします。

どんな筆記用具で書けばいいのか?

最近では、多くの劇団が、最初からアンケートの右斜め上に、プラスチックの羽型の先に鉛筆の芯がついている極めて便利な筆記具を付属させている傾向にあります。
あれは、そのまま持って帰れるゆえ、自宅の電話の近くに置いて番号をメモする、や、
冷蔵庫の近くに置いてスーパーで買う食材のリストを書く、などの二次使用も魅力。
あれは、心が安心して書ける理想の筆記用具です。

逆に、舞台終演後に、「書くものがない方はこちらをお使い下さいませ」と、
スタッフから配られるボールペン、あれは書きにくい。
大抵、中国の大連あたりの工場で大量生産されたもので、インクが途切れ途切れ、
書く方の心が乱れます。
関係者の方、配る時は、出来るだけ、パイロットを使いましょう。

しかし中には、ペンはおろか、アンケートの紙すら存在しないといった貧乏な劇団も。
この場合、逆に不思議な現象が発生いたします。
お客さんが出口の所で、出演者などに直接感想を述べて帰って行くのです。
紙に書かれていないので、その感想を他の出演者たちに口頭で伝えるという、アンケートの伝言ゲームが行われます。
「なかなかよかったよ」が「凄いよかったよ」「岸田戯曲賞取れるよ~」
に返還して行く一面も。

また、せっかく書いて下さったのはありがたいのですが、派手なアンケートは困ります。

たまたまポケットに入っていたのか、三色ボールペンの黒、赤、青、を意味なく使いわけながら書いているお客様、読みづらいです、
そして、そういうのを書くお客様は、かなり高い確率で、今、目の前で見た演劇とは全く関係のないイラストを描いたりしています、なんなんだと思うんですけど、そのイラストが、そこそこ上手という。
読みにくいアンケートも困ります。

時々、非常に読みづらい字を書かれる方がおられます。
これは、一体なんて書いてるんだと、関係者は全員でその文字を、古代エジプトの文字のように解読しなければなりません。
アンケートに、そんなゲーム性はいりません。

また、文字自体は読めるのですが、異常に小さく書く方も。
アンケートは米粒ではありません。

そして、アンケートで、他人の意見は困ります。

ごく稀に実在する、とんでもないアンケートは、自分で書くことが思いつかなかったのか、隣の人のを、のぞき見て書く、アンケートのカンニング。
同じ感想を書いた紙が2枚回収されることになりますが、完全に字が乱れている方が、
犯人です。



☆第2章


この章では、せっかく書いていただいたのにもかかわらず、書かれて「悲しいアンケート」についてお話いたします。
私が今まで関わった舞台で、実際に書かれていた、悲しい感想ベスト3の発表です。

第3位「舞台に出ると、大きな声ですね」

当り前です、小さかったら聞こえません。
これと、ほぼ同レベルの感想に「よくセリフを忘れませんね」
などがあります。

第2位「劇場の雰囲気が素敵でした」

これは悲しいです。
誰もいじられていません。
これと、ほぼ同レベルの感想に、「空調がうるさかった」
などがあります。
そして、もっとも悲しい感想の第1位ですが、
私は昔、大阪のワッハ上方のレッスンルームという場所で行われていた、クソ同然のお笑いライブで、クソ同然の女子高生のお客様たちに書かれましたアンケートの内容、
これを悲しい感想、第1位とさせていただきます、その感想とは、たった一言、
「死ね」
でございました。



☆第3章


さて、それでは、いよいよ実践篇にうつりたいと思います。
まずは、演劇人の心をくすぐる上手な褒め方をご紹介いたしましょう。

外国人の劇作家の名前を交えて感想を書きましょう。

「この芝居は、まるで桜の園の頃のチェーホフのような世界観に、ゴド―を待ちながらを完成させた頃のベケットの新鮮な不条理さが合わさって、役者の演技が最後まで、
ニールサイモンの喜劇のようだった」

全く意味が分かりませんが、褒めているように聞こえます。
逆に、けなす場合ですが、これも実は同様の方法論を用います。
演劇人の心をくすぐる上手なけなし方。

「この芝居は、まるで晩年の頃のチェーホフのような世界観に、晩年の頃のベケットの
使い古された不条理さが合わさって、役者の演技が最後まで、佐藤B作のようだった」

このように書くと大変、喜ばれます。諸君、ご理解いただけましたか。

また、本当はボロクソに悪口を書いてみたいが,勇気がない、無記名で書いてもいいのだけれど、それは、ネットの2チャンネルのようで、いささか卑怯な気がする。
出来れば名前を書いて提出したいが、あとから何か関係者に言われるのではないか、
そんな心配をされる方いませんか?

しかし、ご安心を、
そんな時は、思い切りアンケートに罵詈雑言、思いのたけを書いたあと、
名前を書く欄に、「蜷川幸雄」と書けば誰にも文句は言われません。

名前の話で思い出しましたが、渋谷のパルコ劇場のアンケートには
「パルコ劇場で見てみたい、おすすめのアーティストなどはいますか?」
という質問の欄がありまして、パルコで何か芝居を見た際には、私は必ず
「はらしょう」と書いて帰ります。
しかし5年位前からこれをやっているのですが、未だにオファーは来ません。
みなさま、パルコ劇場へ行った際には、是非、はらしょう、と、
アンケートに書く、アンケートのご協力をお願い致します。


☆役に立つ!演劇のアンケートの書き方講座 いよいよ最終章

さいごに・・・
そもそも、なぜアンケートというものが存在するのでしょうか?

カーテンコールで出演者が
「アンケートを書いて頂けたら嬉しいです!なんでも書いて下さい!私たちは参考にしています!」と言って、促していますが、
実際、少しでも批判めいたことを書かれると、関係者全員、劇的に落ち込みます。
はっきり言って、参考にする余裕などありません、しかし、それでもやっていけるのは、
その都度、ガス抜きがあるからです、そう、それこそが特筆すべき事実、
そのガス抜きとは、「打ち上げ」です。
打ち上げは素晴らしいです、その公演がうまくいっても、いかなかっても、そしてアンケートでボロクソに書かれても
「色々あったけど、でも、みんな頑張ったよね」
と、酒という合法ドラッグをワイワイと流し込みながら、すべてのマイナス要素をなかったことにしてしまいます。
このように、アンケートと打ち上げはセットになっており、どちらかでも欠けると、
公演全体に破綻をきたします。紙でも口頭でも構いません、アンケートは、演劇を行う側にとって、なくてはならない存在なのです。

以上、アンケートの書き方講座でした。
みなさん、もし、知り合いに演劇関係者がいたら、このようなテクニックで
切り抜けましょう。

お友だちは、大切に!