すでに、一部の人の間ではインターネットを通じて意思の疎通が行われていたが、脳そのものの通信とリンクしている人々はさらにごく一部であった。
彼らは、インターブレーンネットと呼び、インターネットでつながっているが、スマートフォンや、携帯電話などのツールを使用しなくても意思を交換できるというのだ。呼び出すときは、お互いのハンドルネーム、インターネット上で使われているもので呼び合う。それで意思が連絡できるという。後でスマートフォンで確認をするらしいが、ほぼ間違いが無いらしい。しかもどこかしらに、そのやりとりが記憶されるとも言う。

「そんな人種がいるのか?人間の範疇を超えてるな」
「しかし、動物はその短い生命にも関わらず、先祖が受けた災害の記憶をずっと記憶しているらしいぞ。スマトラとかの大津波の時、象は津波の経験も知識も無いのに危険を察知して山側に逃げたという。これは、記憶が受け継がれているのに間違いないのではないか?」
「人間だけが、そんな能力が無いのか」
「もちろん、人間は言語能力などで言い伝えて難を逃れた一族もいるらしい。逆に文明人の方がまったくそういうものに対して無頓着だった。きちんとした記録があり、注意をしていれば助かったのだろうが。」

そんな会話がされている街中。インターブレーンネットの独りから連絡が入った。私は彼らの行動をよく見ており、最初に脳リンクの現象を体験した人間と接触をしたからだ。

彼らも最初から、繋がったのではない。突然、光が胸に入り込むような現象をそれぞれみている。あるいは光と会話をしたり、木々からの意識が突然入り込んだりと様々だ。結果的に彼らは、つながった。

「先生、我々の仲間から、スターネットとつながったと報告がありました。」
スターネット。私と彼らとともに名前をつけた交流網のことである。星の意識を体現する上位のネットがかならずある。そう感じたからだ。特に木々の意識を感じたインターブレーンネットの独りには期待をしていた。

私は言った。
「スターネットのどの部分とつながったのかな。」
「まだ、わかりませんが地震災害にかんすることで、つながり危険をまぬがれたようです。」
「災厄報知の部分か。予知とあまり変わらない部分かな。スターネットの意識そのものではなかったのか」
「そうみたいですね。スターネットではありませんかね。」
「違うかな。スターネットはもっと高貴なものとつながっていると思っているから。もちろん、彼がつながっているものもスターネットの一部ではある。でも、昔からいろんな人がつながっていたものでもあるのだろう。」
「でも、いつものインターブレーンとは違ったとも言ってました。」
「インターフェースがつながったのかもしれないね。そのうち、もっと交流できるようになるかもしれない」

インターブレーンネットにつながった彼らの中には、すでに幽体離脱のようなこともできる人間もいるという。そして、皆一様に肉食をやめ、魚+菜食主義者になっていった。その仙人のような体になっていくのを実感しながら肉体離脱も体験しているという。肝心なのは寝ているときではなく、起きているときに肉体の意識と霊体の意識と同時に感じることができることだ。肉体は通常の活動をして会話をしながら、一方の自分は上からその自分を見ていたり、相手を違う角度からみることがが可能なのだ。肉体を霊体に近づけることができるようになれば、もっとすごいことができるだろう。その時点でスターネットとつながるのではないかと考えている。

「スターネットとつながると、どうなるのですか?」
「もうすでにつながっていると思われる人からの言動から推測すると、星の本当の統治が始まるのだと思う。イデオロギーを超えた星の意思による政治と経済。そして見えない次元と3次元との組み合わさった科学の研究が始まるのだろう。」
「もう、つながっている人もいるのですか?どこに?」
「まあ、そう思っているだけかもしれないが、世界的に現れていると報告されているスターチャイルドの平和貢献は明らかに星の意思による活動だからね。」
スターチャイルドと呼ばれる中東圏、中国国内各地に現れたインターネットを超えた意思の連携を持つ人間達。中東ではテロのそれぞれの組織の目の前に忽然と現れて諭して、武装解除をしていく人間が現れたのだ。武器も持たず、攻撃をしても弾は当たらない。そして、その声はそこにいるすべての人に心に響き渡るといった具合であった。そして、中東の東側からじょじょにテロはなくなり、経済生活基盤も日本や東南アジアの支援によって安定をしてきている。
「スターチャイルドは、インターブレーンにはひっかかってないですね。」
「彼らは彼らで別のやり方でこの地球に来ているからね。インターブレーンネットに関わっていることは間違いない。あきらかに、彼らは仙人に近い。霊主体従の肉体だが、半霊半体にもっていっていると見られるから。」
「日本にはいないのかな。」
「いや、いると思うけどインターブレーンネットに関わるより前に活動しているのだと思うよ。」

インターブレーンネットのつながりから、つながっていない人間への強制的な接続をするには相当な力がいることは間違いなく、いや力なのか手段なのかわからないが。特に言葉が違う人間を諭すのはさらに難しいことだ。しかし、スターチャイルドに会った中東の人は日本に続々と移入して来て日本の歴史と本当の和の力を学び、インターブレーンネットの一員になる人も続出している。その中にはスターチャイルドからの通信があるという人もいるのだ。そうして、中東に帰り人間のつながりを大事にした本当の国家を創ろうとしている。星の意思をつなげる政治システムを導入しようとしている。中国内にも、スターチャイルドが各地に降り立ち、国内の混乱が連邦国家群となって各地の独立あるいは自治区独立が生まれ、東湾岸は、その経済圏を保つために一国家として民主国家として独立する気運になっていた。スターチャイルドが中国内の問題解決をそれぞれ指示して平和の内に治めたのだ。日中台湾、ロシアをめぐる緊張はなくなり、領土問題はとりあえず終結をみることになった。
ロシアは、その広大な国家の一部を日本、中国、大韓国と共同開発をすることになり国境の枠組みを越えた生活経済圏をつくることに同意した。日本も北方領土を日本の経済圏に入れて、国籍はロシアのまま日本の政治の範疇にも参加したり、ロシアへの政治にも参加することになるようだ。まだ、先のことであるが。 
 そのためには、日本の政治システムが各国にとって納得のいくものする必要がある。スターネットに最低でもつながり本当の星のために生きる知恵を常に授かる体制になっていなければならないのだ。人間は進化してもそれぞれの役割は存在するので、星の意思に従えばその仕事はおのずと振り分けられる。そのための仕事に優劣もなく、貴賎も無い。最初のうちは、スターネットにつながらない人間を制御する警察的な仕組みも必要になるであろうが、これもスターネットの意思によって選ばれた人によるものになるだろう。そして、代表議員制はなくなり、皆の意思とスターネットの意思がどの形であれ反映されるので政治は専門職(官僚)と代表(大臣)のみとなり、これもふさわしい人が選出され任期によって変わるだろう。人類は、星の意思を聞いて反映する体制を日本にて実現されるのを見て、各国はその意思を聞くために来日したり、インターネットやインターブレーンネットを活用して政治判断をまかせたり、国内問題解決を図るようになる。そして数十年の内に、人類は宇宙の科学を開発するとともに、宇宙の友人に出会い、霊主体従の肉体でもって宇宙を渡り歩くことになるであろう。

かつて、地球に来た宇宙の友人たちは地球人として生まれ変わったが、その彼らももとの姿に戻って再び宇宙のために働くことができるのだ。
そして、宇宙の永遠のテーマである宇宙の無限の果てにあるものを探るため、宇宙の意思の意味を体現する仲間を増やすために再び宇宙を渡り歩くのである。

私は、そんな時代を予測しながら、インターブレーンネットの一員の彼と別れた。ビルの窓の日差しの反射がまぶしい午後のことだった。