向かい風に「逆風」「逆境」のイメージをもつ方も多いことでしょう。

飛行機は、離陸時、追い風ではなく、向かい風を好むといいます。



飛行機は、翼に風を受けて発生する「揚力」(上に向かう力)によって上昇していきます。

揚力は、機体が前進すると、主翼の上面と下面に流れる空気の圧力差によって生じ、「向かい風」が強いほど増大します。

つまり、結果的に、向かい風があれば、短距離の滑走で離陸できる、安全に離陸できるというわけ。

もちろん、飛行機の大先輩・鳥さんが飛び立つ時は向かい風。



きっと、彼らは向かい風をネガティブには捉えていないことでしょう。

写真を撮りながら、私が飛行機が好きな理由を考えていました。

「技術力への憧憬」「離陸時のほど良いG体感」「広角レンズのような視界」・・・。

多くを挙げられますが、いちばん好きな理由はこれだったようです。

離陸の瞬間に得られる、「逆風の中を滑走し、余計なものを蹴散らして舞い上がる」疑似体験。

「向かい風のとき、 飛行機は追い風ではなく、向かい風で飛び立つということを思い出してほしい」とは、フォード社を創設したヘンリー・フォードの言葉です。

その言葉を思い出していたところ、休むまもなく、次のビュースポットが現れます。



風の塔です。



羽田上空で小窓越しに見かける、海上に浮んだヨットの帆のようなこの子。



正面(?)からの姿は、クジラさんが口をあがーっと開けているかのよう。

愛らしく見えてきちゃったーっ。



塔のデザインは、平山郁夫画伯と東京芸大学長が中心になって決定。



東京湾という環境下に、多くの船舶の往来があることを考慮して、群青と白のストライプでカラーリングを施し、船からの視認性を高めたとのことです。


川崎を通過したら、やってくるのは横浜。



鶴見のつばさ橋、



ベイブリッジにみなとみらいと、流れていく景色が私たちを飽きさせてくれません。

(羽田空港のように富士山が見えない。じつは羽田空港は補正したのですけれども。)

横須賀に入ると東京湾唯一の無人島が見えてきました。



猿島です。



同行してくれたおたるたん、大喜び。



そして、猿島の対岸には、アメリカはカリフォルニア州に属する米軍基地があります。



白い建物群がご覧になられると思いますが、あれらは米軍の住宅なんですよ。

数分後、おがさわら丸は東京湾の玄関口・浦賀水道にやってきました。



観音崎灯台、奥には久里浜の火力発電所が見通せます。





城ヶ島に城ヶ島大橋。
幼少の頃、よく遊びに行ったのを思い出します。

今年、城ヶ島ホテルが「ふふ城ヶ島」に姿をかえて開業する、という話を聞きました。

気になるー。




さてさて。海がひらけてきました。ぐっと外洋に近づいたようです。

左舷へと移り、房総半島の洲崎を過ぎるのを視認しました。



太平洋に出ますー。



ここで、8デッキ(展望スペース)へと向かいました。



おがちゃん、働いてます。



お日様をガッシガシに浴びることとなり、お肌にはよろしくないですが、見晴らしは8デッキがベストです。







遠くへ来たものです。

四方はすべて海。陸地は見えません。

船尾にはコンテナが隙間なく積まれています。



さて、このコンテナはなんでしょ? 
(小学校の生活科の課外授業みたい。) 
正解は1、2週間後にやってきますので、そちらをご覧くださいませませ。


知らぬ間に携帯は圏外に。
眺望と撮影に夢中になっていたため、気づくのが遅れました。

波も立ってきて、船は大きく揺れ始めました。

外洋に出たあたりから船酔いの予兆があったのですが、本格的に気分が悪くなってきたようです。

人生初の船酔いです。

むかし、友人と船で石垣島から波照間島へと渡った時のこと。

港に着くと乗船者の半分ほどがリバースなさったのです。

今でも、集団食中毒にかかった?とも見えるなかなかにおぞましい光景をハッキリ覚えています。

そしてピンピンしていたのは私と地元の方だけでした・・・。

この経験もあったからでしょう。余裕をかまして酔い止めを飲んでませんでした。

いったん、客室へと戻ります。

まずは、自分がもってきていた酔い止めを飲もうとすると、姉が酔い止めを差し出してきました。

てのひらにチョコンとのった無敵感漂う薬を見た途端、末っ子スイッチが入り、完全に甘えモードに。

症状を訴えると
「え? コロナってことはない??」との応え。

今度は、簡易検査キットをくれました。

ドラえもんのポケットのように、次から次へと良薬が出てきます。

お姉ちゃん、ありがとうー。


お姉ちゃん、ありがとうー。

ひとまず、陰性の反応でしたが、ベッドで安静にすることにしました。

※船内の通路には、船酔いでスプラッシュした時のひ・み・つ兵器「ゲ●袋」が至る所にぶら下がっています。
(おかげさまで、最後までこれにはお世話になりませんでした。)

③ー3で、おがさわら丸の船内をひと通りご紹介しましたが、特筆したいサービスを残しておりました。

私が横になって本を読みふけっている間に、よろしければこちらをどうぞ。

★貴重品ロッカー



鍵式ではなく、指紋認証方式。
無料で利用できます。

★衛星電話



東京湾を抜けた後は、基本的に携帯電話は圏外です。

姉曰く、八丈島近くで一度電波をつかんだそうですが、それ以外は皆無。

衛星電話ですので、それなりに料金はかかりますが、緊急の用事があれば、ここでトゥルルルーとお電話を。

公衆電話の番号も明記されていますので、相手からの電話を受け取ることもできます。


★冷蔵ロッカー



初見です。

冷蔵庫を備えていない客室の方々は重宝しそうですね。

出かけていた姉が戻ってきました。

「もうすぐ日没だよー」

伊豆七島をのぞむことは諦めていましたが、沈む夕陽は逃したくなかったのです。

窓あり部屋を選んだにもかかわらず、読書に没頭していて気づかなかった・・・。


知らない間に雲が厚くなっていました。



時間の経過を風景から感じられます。

真に心身共に解放されたのは2023年に入ってから、という方々は多いのではないでしょうか。

ゆったりと過ぎてゆく時間の中で、この2、3年、縮こまっていた五感が刺激されていきます。

まるで、ふたたび生きることを細胞が喜んでいるかのように。



遮るもののない外洋に激しく揺れる船の上。

そこで吹き上がる海水の飛沫を受けながら見た夕陽は、今まで見たどの光とも違う新鮮な光を放ちながら、(私はそう感じながら)、目の前で海の中に沈んでいきました。