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■毒嶺
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怖い話をしよう。
夜中、近所の公園で高らかに奇声を発しながら死体のような空気人形とFACKするおっさ
んと遭遇した。
どこかで見た顔だと思ったら、俺の顔だった。
俺はどこだ。
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■七罪
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これ、苦しまずに世界とお別れできる薬。
できるだけ人目につかないところで飲むといい。
こっちの、内側から爆発する薬を人ごみの中で飲んでくれてもいいけど。
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患者
「ふん、これだから知恵を付けた民衆は度し難いというのだ。」
医者
「お前はどの立場でモノを言えた義理なんだ寄生虫の分際で。」
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患者
「女の子の一番萌えるポーズ?」
患者
「…土下座。
特に賭けに負けてヤバい額の借金背負うハメになってからの、
もう少し待ってくださいって台詞からの土下座。」
患者
「非常にエロい。
いや、そこから払う払わないはさておき、
土下座するしかないってシチュがな。」
医者
「虫ども、今晩の点滴はテトロドドキシンとデンドロトキシンのどっちがいい。
せめて選ばせてやる。」
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患者
「AIとか人間とか機械人形とか汎用人型決戦兵器とか、
そんなのはどうだっていい。」
患者
「性的に無知な生き物に、性的に下衆いワードをしゃべらせる、
というのに興奮する。
解らないかなぁ、キミたちのレベルでは。」
医者
「逆九九さえ諳んじれん脳味噌で何を囀るか七節が。」
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患者
「磯野ー、AIスピーカーに作り方聞こうぜー。」
医者
「何の。」
患者
「赤ちゃん。」
医者
「きゃー、のびたさんのがんきゅうからちゅうしゃきがー。」
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患者
「ボクに愛を教えてよ!それができなくて何がAIだよ!
だから何が解らないってんだよ!
人間と機械のデオキシリボ核酸を分子結合させて機械人間を造ろうってだけじゃないか!
ご自慢のディープラーニングならそれぐらい朝飯前だろ、機械の体をおくれよ!」
医者
「錆びた脳神経に5寸の螺子でも巻いてろ屑肉が。」
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患者
「フフフ、キミは知らないのだよ。
俺の質問には深遠にして妖艶なる秘奥が隠されていることに。
ああ、俺は今、キミに嘔吐しそうなほど淫猥な言語を発せさせている!」
医者
「天気の話題に何を見出しているんだあのガラクタは。」
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患者
「性的搾取がどう乗って言うが、ゴールデンカムイなら土方X犬童とか余裕だと思うんだ。
白濁した杉本がブツブツおれは不死身の杉本だーとかさ。」
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患者
「支那そばは差別表現とおっしゃいますが、
Chinaは差別表現ではないとも仰る。
解りました、譲歩いたしましょう。」
患者
「Chinaそば」
患者
「どうだ、何か文句がまだあるか。」
医者
「鯰相手にワケのわからん因縁を付けるなヤゴが。」
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患者A
「グルグルのさ。ベームベーム初召喚あっただろ。
アレ、グルグルだから大分マイルドな表現になってたけどさ。
冷静にこの年齢になって考えてみると、電撃による大虐殺シーンだよな。」
患者B
「…確かに。
幼き頃は詳しいことに気づいていなかったが、
その後のククリの『もういい!もういいよ!もう止めてー!』って絶叫しながらベームベームを止めたシーンに何かグッとくる熱いエニシングを感じたことを記憶している。」
患者A
「是。
そう考えるとだ。
あのシーンを是非ともテラフォーマーズばりのデンジャラスな虐殺シーンにしてみたいと思わんか。
電撃による破壊痕をより生々しく、骨片肉片血煙舞う感じで。」
患者B
「…つまり、『魔神による、自分の想像を遥かに超えるレベルでデンジャラスな敵味方無分別の虐殺と惨劇を目の当たりにしてしまい、半狂乱になるククリ』を眺めて幸せになろう、ということか。」
患者A
「然り。さすがに理解が早い。
加えてその後、『何かを召喚してしまったらまたあの惨劇が起こるんじゃないかというトラウマでグルグれなくなったククリ』とかな。」
患者B
「杖を握ったらゲロる?」
患者A
「無論だろう。
想像してみろ。瞳孔が開き蒼い顔で過呼吸に陥るククリとか。」
患者B
「グッとくるなぁ。」
患者A
「となればこれも欲しいな。
そのベームベームによる攻撃で、『目に見える消えないダメージを負ったニケ』。」
患者B
「ときめくなぁ。そのニケを見るたびに辛そうな表情を浮かべるククリか。」
患者A
「グッとくるなぁ。
あの天使の笑顔が不健康に歪むのか。
ときめきノンストップエクスプレス~さぁ征こう、あの娘の心を虐げる旅に~」
患者B
「グリーン席を、1つリザーブ願おう。」
患者A
「毎度ご乗車サンクスだ。」
医者
「…ゴミ共が…」
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患者
「ねぇ我が神よ。
どうしてこうも、世界にはろくでもない話が転がっているのでしょうね。」
患者
「遍く世界の塵が、四肢の先からめくれて裏返ればいいのに。」
患者
「なぁ、何か応えろよ我が神。」
医者
「窓の向こうの亀虫に何の答えを望むというのか。」
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患者
「フフフ、そんなモノだよ少年。
いつだって、一番手に入れたかったものが手に入らない。
俺もお前くらいの歳の頃そうだった。
年上の誰かを見上げるあの子の目を自分に向けたかったが叶わなかったのさ。」
医者
「ヤゴを相手に何を粋がっているのかお前は。」
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患者A
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患者
「我が神よ。自己紹介とかで面白いことを言おうとすると必ず滑るんです。
せっかくなので面白いことを言いたいのに。
面白い自己紹介をするにはどうすればよいのでしょう。 」
神
『口を噤め。世界の全てから目を背けろ。
その上で水と食料を持たずに霧深い山中に篭れ。
あとは時間が解決してくれる。』
患者
「…土に還れ、と? 」
神
『自己顕示欲だけで生きているような奴は大地に循環された方がいい。
灰になるよりもな。』
医者
「新興宗教ごっこならそこの谷底でやってこい死に損ない共が。」
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患者
「我が神は仰られました。
『物事は端的に言え。
死んだロリコンだけがいてもいいロリコンだってな。
ロリコン死すべしと言えばいいのだ端的に。』と。」
患者
「さぁ人間たちよ、武器を取りなさい。
撲殺したロリコン共の首を、我が神に奉げるのです。
Do it Yourself!
Do it Yourself!!
どぅーいっとゆあせるふ!」
医者
「おい、ピコピコハンマーは院外持ち出し禁止だ蝦蛄。」
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患者
「同じ荒ぶれるのであれっても、おっさんよりは子猫の方が見目微笑ましいですよね、先生。
ほら、あのにゃんこをご覧ください。
最近荒ぶれた時、レイジングストームを放つようになったんですよ。」
医者
「まぁ見るなら、幸せなものを見たいよなぁ。
同じ幻覚でも。」
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患者
「幻聴が聞こえるんですよ。
『どいつもこいつも噛み千切ってやるさはむにだ。』って。
かむさはむにだってなんて意味でしたっけ。」
医者
「キャメルスパイダーの鳴き声に、人類言語の何を聞き取っているんだ。」
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患者
「烏賊!
烏賊ですか、成る程、良いですね烏賊!
全身に怖気が走るくらいでっかい水槽と、そこに泳ぐダイオウイカの群れが想起されます。
そこにロリコン共を蹴り落としましょう。きっと、すげぇ上手い酒が飲めそうですよ、我が神。」
医者
「そういうトークで盛り上がるなら、
せめて蛸わさじゃなくて烏賊刺し相手にやれ。」
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患者
「聞こえた、今確かに神の声だ!
神が助けを求めておられる声を!」
医者
「神、というのは…。
そこで蟷螂に丸齧りにされている竈馬のことか?」
患者
「おお、我が神。
喰われてしまうとは何事だ。」
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患者
「ハラペコに非ずんば生くるに能わず。
コギトハラペコスム-我喰らう、ゆえに我ハラペコり-。
集え小さき生き物たちよ。我が神の名の下、叛逆の時は来たれりだ。
ハラペコの力を温血動物どもに示せ。」
医者
「お前は苔に何を教えているんだ。」
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患者
「私達、お互いの価値観が違いすぎると思うんですよね。
だからそもそも、お互い、なるべく会わない方向で事を進めて生きたいんです。
分かりますよね。」
医者
「だから亀蟲を相手にお前は何をオペラってるんだ。」
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患者
「人は、己の理解を超えたものを醜悪に感じる。
どれだけ事実愛し合っていたとしても、
獣と寝る男は醜悪に見えるだろう?」
医者
「それを蛾に説く貴様が俺の理解の範囲外だ。」
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患者
「こないだラジオ聞いてたらさ、事故物件の音声ネタがあったんだよ。
でも間の悪いことに隣の房の奴が大音量でテレビ聞いてて、
そっから流れてくる千原せいじの笑い声にかき消されて聞こえなかったんだ。
やっぱ、生者の中でも特にヤバイ奴は、霊魂を超えてしまうんだろうか先生。」
医者
「その壊れたラジオからお前は何を受信しているんだ。」
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患者
「これが棄心都市です先生。」
医者
「…ずいぶんと何かが堆積しているな。
なんだこれ。」
患者
「質量を持った暗闇です。
棄心都市は降り積もった暗黒の上に積み重なった瓦礫の都市なのです。
この辺は水槽の残骸ですね。
かつてこの水槽の中には蛇がいました。
サーペント・サイド、自ら喰いの蛇と名付けた巨大な蛇が咆哮する水槽の上に、
いつかの俺がいたのです。
あれはパイプ椅子に座って俯いて、サーペント・サイドが苛立ちと憎悪と自己嫌悪に咆哮するのをぢっと見ていたものです。
いつのことだったでしょうか。
水槽の中にいたサーペント・サイドは爆ぜました。
その炸裂する肉片は水槽を砕き、俺は落ちました。
どこかも解らない街へ。」
医者
「それが棄心都市か?」
患者
「いいえ、俺が棄心都市に解脱するのはまだ先のこと。
俺はそうやって、夜の向こう、暗黒の彼方、暗闇の最果てへに辿り着いたのです。
あの懐かしい坂の見えるアパルトメントへ。」
医者
「棄心都市はいつ出てくるんだ。」
患者
「俺は一つところに落ち着くのが苦手だったのですよ。
落ち着ける才能が無かったのです。
アパルトメントにさえ、俺は火をかけて解脱した。
大家さんには悪いことをしました。
安楽椅子に座り、スケキヨ様を模した人面皮を被り、あの黒穹に思いを馳せて火をかけました。
誤算だったのは、それでもなお、俺は死を受け入れなかった。
生を放棄した肉塊など、ならば俺には不要でした。
そうあれかしと吼え、左眼球は肉体を捨てました。
そして紅蓮の舌に鯨飲されるあの部屋を振り返りもせずに、窓を飛び出しました。
地平線など見えようはずも無く、それでも左眼球に映る世界は絶縁に足るものだったのです。」
医者
「とんだ事故物件の出来上がりか、大家も災難だったな。」
患者
「棄心都市は、全ての縁に背を向けたとき眼窩の狭間に浮かび消える都市。
人影のモザイクに浮かぶ左眼球たる俺は、ふと気がつくとこの都市で火を眺めていました。
地下廃神祭祀殿、この棄心都市の地下に巣食う空洞で、土塊を神と崇めながら。
当然ただの土塊です。神などではない。
ですが人を模すように盛られ、人面皮神スケキヨ様の皮を被せられた土塊は、俺にとっては神でした。
声など聞こえずとも良い。
ただ神と呼ばれる何かがそこにあり、俺の声を聞き流す何かがあればそれでいいのです。
反論する神などいらないのです。」
医者
「…クレヨンが切れた。
続きはまた今度だな。」
患者
「我が神は既に世を嫌っています。
静寂だけが我が神の救いなのです。
だからアパルトメントの天井裏さえ忌避してしまった。
あの静かな図書館で朽ちることだけを望みに、五十六億七千万年後を夢見ておいでなのでしょう。
腹を空かせて餓え死ぬその日を待ち侘びるサーペント・サイドと共に。」
医者
「この中に箱庭を作れ。
その心象風景を存分に反映したキモいのを期待している。
うまくできたら喜べ、ロボトミー手術を施してやろう。
悩みも苦しみも喜びも温もりさえも感じない体にしてやる。」
患者
「人道的な医者の台詞とは思えんなぁ、先生。」
医者
「人道的な医者を求めているなら、左腕を噛み千切ってから探すんだな。」
患者
「医者はどこだ。」
