ジオヒストリアという本。

1783年に青森の最高峰である岩木山が水蒸気爆発を起こした。

同年に浅間山が大噴火を起こし、関東・東北に火山灰を降らせ。噴煙は成層圏に達した。

このときの記録では

「このとしは、春は雨まれにして、4月のころより雨ふりつづき、8,9月のころまで陰雨連日にして、夏伏陰ありて、朝顔なんども蔓ものび侍らずかじけたり。皆人うれう」

浅間山噴火のことから、異常な冷夏だった。

「浅間山やけ出て、江都も灰など多く降りて日も陰々として時々鳴動やまず侍りぬ。浅間山の焼けたるは耳に聞きしも甚だしき事ぞと、みな人いいあひぬ。2年ほどへて安中・館林の辺に行きしものに聞きしに、「いまに万山枯木のみにして、灰のふりける山は白妙に雪降り積めることならず。鳥居のかさき屋の棟なんど、わずか灰の中より見ゆるなんど侍りし」となり」

2年後になっても、群馬の安中・館林あたりでは雪が積もったように火山灰に覆われ、すべての木は枯れ、神社の鳥居の笠木(最上部の横木)だけが灰の中から突き出ているありさま。

これによる直接的な被害に加え、成層圏に達した火山灰が太陽光を遮ったり、また噴出した亜硫酸ガス等による寒冷化効果などによって、異常気象に拍車がかかることによって、東北諸藩ではコメが壊滅的被害を受け、飢饉が始まった。

津軽弘前藩(青森県)の公式記録では、人口20万人の3分の1にあたる8万人が餓死。

八戸藩(青森県)では人口8万の半分に当たる4万人が餓死。

盛岡藩(岩手県)では人口30万人の4分の1に当たる7万5000人が餓死。

東北地方全体では30万人が餓死したと推定されているようだ。

その時は、先に力尽きた人を食人して飢えをしのいだり、餓死した者の死体捨て場で、またの肉を切り取って、草木の葉と混ぜ、犬の肉だと言って売ったりしたようだ。

浅間山噴火と同じ1783年にアイスランドのラキ火山が800年ぶりに大噴火を起こした。

大量の火山性ガスが付近の羊の80%、牛馬の50%の命を奪い、これに続き飢饉により住民の21%が餓死した。

北西風に乗った火山灰はヨーロッパ大陸でも観測され、欧州各国でも死亡率が2~3倍に跳ね上がった。

翌年は北米大陸も寒波に襲われ、ミシシッピ川が凍り、メキシコ湾に氷が浮かんだ。

飢饉による穀物高騰に不満を持つ暴動が続発し、貴族などの経済的特権を剥奪する財政改革案は激しい抵抗で中途半端に終わった結果、

民衆の不満はブルボン家に向かい、パリ市民のバスティーユ襲撃(17897)からフランス革命が勃発している。

この時、日本の東北地方でも「やませ」による冷害が起きており、同時期のロシアでは、最後のコサック反乱と言われるプガチョフの反乱も起きている。

その原因は、エルニーニョ現象だったり、太陽の黒点周期とも関連するし、火山の大爆発とも関連していた。

民主主義は気象条件によって誕生していたとする説である。

この本の「おわりに」で書かれていることは

「太陽表面で起こるほんのわずかなさざなみ、地球の傾きのほんのわずかな変化が、数億人の運命を変えてしまうことを知ると、人類というのはみかんの表面に生えたカビの中に住むバクテリア程度の存在なのだと思い知らされます。」

ということだよねぇ。

むかし、生命の歴史のDVDドキュメンタリーをみたことあるけど、巨大隕石が地球に衝突した時の影響も、地球全体を寒冷化させたり、海中の生物が殆ど死滅したりした時期もあった。あるいは、爬虫類でなく、哺乳類が増えたのもそういうのが背景にある。

地球への隕石の衝突頻度を左右するのは、木星や土星など質量の大きい惑星が周囲にあって、そっちに隕石が引きつけられることで、一定の確率で衝突を回避していたことも、今の地球の生物圏の形成に大きく影響しているらしい。

あるいは、太陽も、水素の核融合で生まれるヘリウムを内部にため込んでいく結果、温度を下げながら膨張を続け、赤色巨星になる。

数十億年後には太陽の大きさは地球の軌道を飲み込むであろうことが予測されている。

その時には、人類がこの地球上に残したあらゆる痕跡は、すべて蒸発することになる。

また、銀河同士も重力によって引き合っていて、隣のアンドロメダ銀河は我々の天の川銀河に対して秒速数百kmの速度で近づいていて、

これも数十億年後に、銀河同士が大衝突するとされている。

それはもう、太陽系とかのレベルの話ではないのである。

これはえらいことだな。

コペルニクスだったか、ガリレオだったか、天動説から地動説にシフトしてから、300年間くらいでそこまでのことがわかってきたけど。

まぁ、地球という天体に生息するバクテリアのような存在である人類の運命宿命というものだよねぇ。

最近は、個人の人生も運命宿命の支配下にかなりあることがわかってきている。

今まで教育とか自分の意思と努力でどうにでもなると信じられていたものが、殆ど人為的にはどうしようもない、「時代」「世の中」「遺伝子」の支配によって、運命宿命が決定していたというものである。

自己責任とはなんなのか?という世界である。

自由意志も、それが発生する数百マイクロ秒前には、何をするかが先に脳内で決まっているという、脳科学での研究報告もある。

自由意志が成立しないなら、自己責任も成立しなくなる。

ほんと、生物界というのは、どうなっているのかわからない。

責任とか、ルールとか、道徳とか・・・・ヒト以外の生物には恐らくない概念だからねぇ。

生物の成り立ちからすれば、もともとあったものではない、後付けで手に入れたアクロバティックな概念なので、つじつまが合わないのかもしれない。

まぁ、こういう知識で副次的に得られる投資の知恵というと、地球のどこかで火山の大爆発があった時には、即座に、穀物などの農産物のコモディティ・ファンドに投資すれば、暴利を貪れる可能性が高いということだよねぇ・・・・その後、地球が寒冷化して不作により、価格が高騰することが、その段階で予期できるということだよね。