一皿でよかですか。 | katedeli (カテデリ) 嫁ブログ

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現在地 佐賀県伊万里市。
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少し前の話になります。

 

仕事が終わって店を出たのが22時。

 

なんだか疲れ果てていた嫁。

 

その日は息子も店にいたので一緒に店を出る。

 

車に乗り込み、エンジンをかけた瞬間、息子が

 

「ママぁ、なんだか小腹がすいてきたぁ」

 

いやいや、7時くらいに息子は店で夕食を済ませている。

 

結構しっかり目に食べていた。

 

なのに、

 

小腹がすいた???

 

完全に今食べたら太るやろ。

 

しかしながら、嫁自身は朝から何も食べていないことに気づき、そういわれればお腹が空いていた。

 

「しゃーないからなんかちょっとだけ食べて帰ろか」

 

っと息子に言うと

 

「よっしゃぁ!!!」

 

っとガッツポーズの息子。

 

息子を理由にしたが、今から家に帰って食事を作る気になれないずぼらかましまくりの嫁的にも助かる結果だ。

 

明日は息子の学校も休み。

 

少しくらい遅くなってもいいだろう。

 

しかしながらこの町の夜の店じまいは早い。

 

この時間からがっつりご飯を食べようものならものすごく限られてくる。

 

嫁の疲労感も半端なかったので本当に家に帰る道沿いにある店を選んだ。

 

駐車場につくと外からでも繁盛ぶりがわかるくらい車が止まっている。

 

うわぁ、この時間から並んだりするんわ精神的に無理やわぁ。心の中でそう思った。

 

息子は駐車場に止めるやいなやドアを開け、店舗のほうに走って行った。

 

どんだけおなかすいてんねん。

 

嫁もエンジンを切り追いかける。

 

店内は人であふれかえっていた。

 

やばい、待たされるのか。

 

店の奥から店員さんの声だけが聞こえた。

 

「空いてるお席にどうぞぉ」

 

ひとつだけテーブル席が空いていた。

 

ギリギリセーフ。

 

嫁と息子が座ると満席となった。

 

こんな遅い時間やのにめっちゃ繁盛してるやん。

 

同じ飲食店を経営するものとしては少し羨ましかった。

 

息子がメニューを見ている。

 

「これにする!!」

 

息子が選んだのは完全に成人男性が腹いっぱいになるようながっつりメニューだった。

 

いやいやいやいや、あんた晩御飯食べてるから!

 

小腹がすいたヤツが頼むもんとちゃうやろ!

 

「なぁなぁ、これはちょっと多いんちゃう??」

 

っと息子に言うと、

 

「食べれるばい!」

 

食べれるばい!っとちゃうわ。逆にこんなけ食べたら太るばい!やわ!!

 

しかし遅い時間まで親の仕事を待たせていたので、

 

まぁ好きなものを頼んでやろう。

 

たぶん残すやろうから嫁はめちゃくちゃお腹がすいていたが息子の残した分も食べると想定し、少なめのメニューを頼んだ。

 

注文をしてから気づいたのだが、

 

店員さんが一人しかいない。

 

えーーーーーーーーーっっ。

 

注文を聞くのも、作るのも、洗い物も、レジ打ちも、一人でしている。

 

マジか!

 

お客さんはざっと数えて私達親子を含め16名。

 

その中でご飯が食べている人は4名。

 

これは料理が出てくるまでめちゃくちゃ時間かかるんちゃうん。

 

最悪やん。

 

めっちゃお腹空いてる嫁はその状況だけでイラついた。

 

だいたいなんでこんな広い店、店員一人なん???

 

いやっ、でも同じ飲食業の嫁。

 

なんだか苦労はわかる。

 

たぶんバイトの従業員さんとかが急に休むとか言ってこの人一人なんかな。

 

とか、

 

昨日急にバイトの人が辞めたんかなぁ。

 

とか。

 

彼がひとりの理由を考え始めた。

 

大変やろなぁ、この状況。

 

一人対16人。

 

しかも相手は全員腹を空かせている。

 

考えただけでぞっとする。

 

嫁はだんだん一人で働く彼に同情しだした。

 

がんばれ!負けるな!

 

このテーブルのことは気にしないでいいから!

 

そんな気持ちになっているときまた新しいお客さんが入ってきた。

 

カップルだ。

 

おいおい、どんだけ繁盛店やねん。

 

店員さんは「少々お待ちください」っっと新規のお客様に伝える。

 

嫁ならその状況を見たら帰るが、またそのカップルはベンチに座って待ちだした。

 

おいおい!これ以上彼に圧力をかけてあげないでくれ。

 

そう思ったが結構なイチャイチャ感あふれるカップルだったのであまり見ないようにした。

 

あぁ、たぶんご飯出てくるまで30分はかかるだろうなぁ。

 

っと思っていたら

 

「お待たせしましたぁ」

 

汗びっしょりの店員さんが、息子の注文品を持ってきた。

 

えーーーーーーーーーーー!!!!!!!!

 

どんだけーーーーーーーーー!!!!

 

めっちゃ早いやん!

 

すごいやん!!

 

そして息子の料理を置いてすぐに嫁の料理もきた。

 

なんという早さ!!!

 

この状況でなんで!

 

まさか、子供連れやからはよしてくれたんかな。

 

まわりを見渡すと他のお客さんももう食べ始めていた。

 

嫁が新規のお客さんに気を取られている間に

 

彼は一人で12人分のメニューをこなしていたのだ。

 

すごい!すごすぎる!

 

もう嫁は彼へのリスペクトが止まらない。

 

嫁の料理が出たと同時に他の食べ終わったお客さんが帰りだす。

 

彼はすぐさまレジに行きお会計の対応をする。

 

少し小太りの彼。

 

汗は滝のように出ている。

 

頑張れ!負けるな!

 

お会計が終わった席の片づけを済ませ、すぐにあのイチャイチャして待っていたカップルが席についた。

 

次はどんどん洗い物をこなしていく彼。

 

輝いてるぜ!

 

店員さんの動きに気をとられすぎて食べるのを忘れていた嫁は慌てて食べ始めると

 

息子はもう半分以上を食べていた。

 

「無理して食べんともうあかんかったら残していいから」

 

いつもなら「残さんと綺麗に食べや!」っと厳しく言うのに、なぜそんな優しい言葉をかけるのか。

 

息子が不思議そうに嫁を見つめる。

 

そうだ、嫁がお腹がすいているからだ。

 

あんたが残す分を見積もって注文したから、残してくれんと絶対に嫁がお腹いっぱいにならない。

 

しかもこの状況。

 

店員の彼に申し訳なくて追加注文なんて出来ない。

 

食べる息子。

 

それを物欲しげにじーっと見る嫁。

 

食べる息子。

 

「そんな食べたら太るで」っと一言かます嫁。

 

食べ終わる息子。

 

無言の嫁。

 

そう、彼はがっつりメニューを全て綺麗に食べきった。

 

嫁、まったく空腹感が満たされておらず、

 

でもここを出て帰る途中またもう一軒よる体力はない。

 

コンビニさえも寄りたくない。

 

メニューを再び見る嫁。

 

どのメニューだったら一人でがんばる店員さんに負担をかけずに済むか。

 

そうだ!おにぎりだ!

 

しかも1個から注文できるらしい。

 

おにぎり1個なら店員の彼にそこまで負担をかけずに済むのではないか。

 

未だにほぼ満席の店内。

 

追加注文に気がひける嫁。

 

まだイチャイチャカップルはメニューを見てあーでもないこーでもないと注文をしていない。

 

よし!今がチャンスだ!

 

店員さんを見ると一生懸命洗い物をしている。

 

ここで手を止めさせるのは申し訳ない。

 

そう思い嫁は店員さんを呼ばず、自ら席を立ち、店員さんに一番近いカウンターに行き

 

「すみません、おにぎり1個追加出来ますか?」

 

っと尋ねた。

 

店員さんは手を止めず、嫁の方を振り返った。

 

「一皿でよかですかぁ」

 

男性だが特徴のある高い声で嫁に聞いてきた。

 

一皿???

 

一皿が一個の事なのか、、、嫁にはわからない。

 

「おにぎりを一つでいいのですが、、、」

 

嫁は彼に言う。

 

「一皿でよかですかぁ」

 

また彼は言う。

 

は??????

 

いや、だから一個やって!

 

メニューにはおにぎり1個っていうのが確かにあった。

 

嫁は両手を使って説明する。

 

両手で三角を作りそのあと指を1本たて

 

「いや、おにぎりを1個です。」

 

嫁が言い終わるか言い終わらないかくらいでまた彼が

 

「一皿でよかですかぁ」

 

かぶせてきた。

 

マジか。

 

「すみません、一皿って一個ってことなんですか?」

 

っと尋ねる嫁。

 

「一皿は一皿ですぅ」

 

特徴ある声にイラッとさえしてきた。

 

今まであなたの動きに関心してきたのに、応援してきたのに!

 

一皿っておにぎり何個入ってんねん!!!!!

 

それを教えてくれ!!!!

 

「一皿っておにぎり何個はいってるんですか?」

 

質問を変えて聞いた。

 

「一皿でよかですかぁ」

 

おいおい、無視かいな。

 

質問の答えは????

 

何個やねん。その皿におにぎり何個のってくんねん。

 

それが知りたいねん。

 

なんかもう嫁、この状況に怒りではなく笑いがこみ上げてきた。

 

笑いは悲しみや怒りと紙一重で生まれると関西人として習ってきた。

 

まさにこれだ。

 

日本人同士なのに、皿に何個おにぎりがのっているのか、そんな謎も解けない。

 

嫁が沈黙をしていたら、また彼が聞いてきた。

 

「一皿でよかですかぁ」

 

もうここまできたら根性やなぁっと思う。

 

それだけ言うならもういい。

 

「一皿でよかです」

 

佐賀弁で返した。

 

「かしこまりましたぁ」

 

今日一高い声で彼が返してきた。

 

2分後、

 

嫁のテーブルにおにぎりが運ばれてきた。

 

お皿には形の整ったおにぎりが2個のっていた。

 

2個なんかい!!!!!

 

っと心の中でつっこんだ。