
この日は朝6時からの稼働。曜日は土曜日。梅雨の真っ只中で、朝から希望の雨だった。「めんどくさい状況は避けたいな、今日はテンポよくとんとん進めたい」という思いが頭をよぎる。雨の日にお札や財布が濡れるのは本当にストレスなので、いつものように雨天時のマイルールに従って「現金案件」はオフに設定。
ただ、なぜかこの金曜から日曜にかけてはクエストや雨クエさえ付いていなかった。
6時半ごろ、2回目の配達で遭遇したトラブル
トラブルが起きたのは開始早々、6時半ごろの2回目の配達だった。 「すき家」の商品を預かり、おもろまちの高層マンションへ。配達先に到着すると、エントランスのインターホンに体重を預けるようにして、女子高生風の若い女性が立ち塞がっていた。
「あ、ごめんなさい」と退いてくれるのが普通だよな……と思いつつ、「すみません」と声をかけてインターホンを押そうとすると、彼女はしらっとした様子で「あ、それ私です」と言った。
どうやら彼女が、この配達先の住人であり注文主らしい。
彼女は「さっきから(家の中に)電話してるんですけど出ないんです。何回もインターホンを押してください」と言う。 内心「え? 一体どういう状況なんだ?」と戸惑いつつも、とにもかくにもこの一件を早く終わらせたい一心で、言われた通りにひたすらインターホンを押し続けた。その間も、彼女は何度も携帯で電話をかけている様子だった。 この時の私は、「家族が全員寝てしまっていて、オートロックが開けられずにマンションに入れないのかな」くらいに思っていた。
私が「え、これ誰が注文したんですか?」と聞くと、彼女は「私がお金まで払って注文しました」と答えた。中身は明らかに2人分の商品。「私が支払ったんですよ」と強調する彼女に、「家族はまだ寝ているの?」と尋ねてみた。
すると彼女は「うん、まだインターホンを押し続けてください。私、その間に近くのコンビニに行ってきます」と言う。 さすがに「ん? Uberには12分のタイマー制限があるんですよ」とスマホの画面を見せると、残り時間はあと4分半。彼女もそれで納得したようだった。
さらに彼女は「私のスマホ、もう電池がないので、私が言う番号に電話をかけてほしい」と頼んできた。 「Uberのアプリ経由でも電話はかけられますよ?」と伝えたが、「いや、それでは出ないので、今から言う番号で直接かけてほしい」と譲らない。 (今にして思えば、父親との間に何か特別な、直接の番号でなければならない意味深な事情があったのだろう。のちにアプリ経由でかけると、プー・プー・プーと鳴るだけだった)。
当時の私の通信環境はWiMAXで、通話はガラケーを使っていた。滅多に使うことのないガラケーを、カッパの前を開いて(通話代もかかるのになぁ、面倒くさいな……と思いつつも)仕方なしに取り出し、彼女に言われた番号へ発信した。
何度目かのコールで、ようやく父親らしき男性が電話に出た。 父親は「そばに彼女がいるでしょ? 彼女が注文したんだから、彼女に渡しといて」とだけ言い、一方的にプツリと電話を切ってしまった。
その内容を彼女に伝え、「自分で電話してみます?」とガラケーを手渡し、操作を教えて彼女自身からかけ直してもらった。 再び父親が出ると、彼女は強い口調で「もういい加減にして! 迷惑かけないで!」などと言い返していたが、やはり父親はまたもやブツリと電話を切ってしまったようで、一向にエントランスのドアが開く気配はなかった。
その間も、私は状況を全く理解できないまま、ただひたすらインターホンを鳴らし続けるしかなかった。 Uberのタイムリミットは、あと1〜2分。 彼女は時折、深く嘆くような言葉を漏らしていた。
そして突然、彼女は「もうそれ、捨ててください!」と怒りをぶつけるように言い放った。手元にあったレトルト米の束をマンションの入り口付近の地面に投げ捨てると、そのままコンビニの方へと去っていってしまった。 (後から思えば、せめてあの投げ捨てられたお米だけでも、自分がちゃんと整えて置いてあげるべきだったと悔やまれる)。
残された私は、仕方がなくUberの画面に従って廃棄処理を進めた。アプリには「分かる場所に置いて写真を撮影してください」という旨の表示が出たため、自分の手でカメラのレンズを塞いで真っ暗な写真を撮影。メッセージ欄に「廃棄希望とのことなので、廃棄させていただきます」と添えて、配達を完了させた。





複雑な親子関係に想いを馳せて
後になって落ち着いてから考えると、「何か複雑な親子関係があったのだろうか」とものすごく考えさせられてしまった。 おそらく、あの家は父親と彼女の2人暮らしではないだろうか。朝帰りしてきた娘に対して父親が激怒し、ペナルティとして家に入れなかったのだろうか。
それにしては、彼女は父親の分も含めて「2人分」の商品を注文していた。そこに込められていたはずの彼女の愛情は、一体なんだったのだろう。普段は仲が良い親子だったのではないか。だからこそ、朝帰りした娘に対して父親の怒りもひとしおだったのだろうか。
高いお金を払って注文した商品を「捨ててください」と口にし、レトルト米を投げ捨ててコンビニへ消えていった彼女の、あの時の苦しくて切ない気持ちを思うと、胸が締め付けられる。 それにしても、父親の仕打ちはあまりにも酷すぎやしないか。
今になって振り返ると、「あの時、もっと彼女に何かしてやれることがあったはずではないか」と、心残りで仕方がない。きっとこの先も、あの光景を忘れることはないだろう。どうか彼女が、今後は元気に過ごせていることを願うばかりだ。
言うまでもなく、廃棄になった商品をそのまま捨ててしまうのはあまりにももったいない。おそらく彼女の様々な「思い」が込められていたであろうその商品を、私は自宅でひざまずき、静かに手を合わせてから、ありがたくいただくしかなかった。

線状降水帯の激しい雨と、怒涛の超高単価
この日はその後、18時ごろに「線状降水帯」の警報が出るほどの猛烈な土砂降りとなった。 さすがに丸一日の稼働で眠気も限界に達し、自宅のすぐ近くでドロップが終わったため、「よし、これで終わりにしよう」と帰路につこうとした。
ところが、そこからが凄かった。画面を開くと、なんと30分で2000円、3000円、4000円といった凄まじい超高単価案件がバンバン鳴り響く。 「これは行くしかないだろう!」とアドレナリンで体を動かし、数件を取り続けたが、20時ごろになったところでいよいよ眠気が限界を迎え、引き上げることにした。途中、60分5000円という化け物のような案件も鳴ったが、これ以上やったら自分の体力が持たないと判断し、泣く泣く拒否せざるを得なかった。
その時の眠気といったら、信号待ちのわずかな瞬間に少しでも意識を緩めれば、一瞬で気絶してバイクごと倒れてしまうのではないかと思うほど、本当に危険なレベルだった。
激しい雨と、切ない人間模様、そして最後に訪れた怒涛のバブル。色々な意味で忘れられない土曜日の記録となった。
【本日の稼働実績】
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売上: 23,566円
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オンライン時間: 14.25時間
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推定時給: 1,654円 (※昼間に全く鳴らない時間帯あり、クエストなし。上記売上のうち、出前館は4,910円)





