陸から海から・好アクセスになった天草
 
私の父は釣りが好きで、よく天草へアジゴを釣りに行く。帰省した今年の夏も、父、母、私、子ども、4人分の釣り竿を準備して上天草市・松島の海へ出かけた。

天草熊本市内から国道3号線を南下し、国道266号線へ。この道をひたすら進めば小袖餅(小さく一口で食べられる、上品なあんこ餅)で有名な宇土市、宇城市を通って三角港を通り、天草地域に着く。この日は平日だったため道が渋滞しておらず、熊本市内から90分ほどのドライブで松島へ到着した。

道路が渋滞していても、「天草宝島ライン」の船で海の上を移動すれば、渋滞知らずで海を眺めながら移動ができるそうだ。2011年九州新幹線が熊本を通るようになり、他県からも訪れやすくなった。

途中、道の駅「あまくさ村」へ。天草四郎の銅像が出迎えてくれる。天草四郎は聡明な美少年で、島原の乱(1637年~1638年)を率いた人物であるといわれている。天草四郎の数々の逸話が、海に囲まれたこの地域に神秘的な彩りを添える。

   
道の駅内では、魚介類の加工品のお土産がところ狭しと並んでいる。インパクトがあるのは「干したこ」。干しイカのスルメはよく見かけるが、干したタコはイカ以上にエイリアンのような風貌で迫力がある。 

 

 
天草には「天草五橋」と呼ばれる5つの橋が、天草の島々を結んでいる。その2番目の橋、2号橋のたもとに「天慎」という和食料理店がある。天草の新鮮な魚を使った料理はどれも品良く繊細な味だ。下記写真の真ん中が海鮮丼セット、右があら炊きセット。熊本料理でおなじみのだご汁も付く。だご汁は豪快なイメージだが、ここのだご汁は白味噌で、繊細・まろやかな味わいだった。 


 
ホテルのプライベートビーチ+鮮魚料理
 
宿は「ホテル竜宮」に一泊する。目の前にはのホテル専用の浜と釣り場。混雑しないので、ゆったりと遊べる。浜は海水浴もいいが、潮だまりにいるヤドカリやハゼの稚魚などを捕まえて遊ぶのがおすすめだ。東京では考えられないぐらい、潮だまりが小さな生き物だらけになっている。専用の釣り場もある。桟橋の下では、エイがペタン、ペタンと裏になったり表になったりしていた。

夕食は部屋でコースをいただいた。タコの甘辛い姿煮は丸ごとを切り分けて食べる。刺身やアワビの躍り食い、鯛飯など盛りだくさん。車エビの躍り食いは、新鮮なあまりコリコリというかゴリゴリ(もちろん、いい意味で)。今そこでとってきたのかと思うぐらい新鮮で歯ごたえがある。

翌日の朝食のビュッフェでは、鯛茶漬けがたまらないおいしさだった。自分でごはんをよそい、鯛のヅケ、ノリ、大葉、あられをのせて、熱いだしを注ぐ。刺身もおいしいが、ヅケにしても新鮮な歯ごたえがある。

   


堤防釣り 

朝食を終え、チェックアウトの後、「ホテル竜宮」から車で10分ほど走ったところにある堤防へ。釣り人がずらりと並んでいるので、釣れるスポットがすぐに分かる。

L字型になっている堤防の、角の部分に陣取る。しかけは「サビキ」という、釣り糸にいくつもの針が枝分かれして付いているもの。小さな魚が一度に数匹上がる。初心者でも子どもでも楽しめて、小学1年生の娘は、家族の誰よりも先にメバルの稚魚を釣り上げた。しばらくするとイワシが次々にかかりはじめ、時折フグも口をとがらせて姿を見せる。お目当てのアジゴも20匹ほど釣れた。アジゴは揚げて、南蛮漬けにすると骨まで食べられてさっぱりとおいしく、日持ちもする。

サビキの針に自分が絡まって四苦八苦していると、隣で釣っていた中年男性がニコニコしながら針を外してくれた。

「竿の一番下を持たるっとよか(竿の一番を持つといいですよ)」

…そんなことも知らない私でも魚が釣れるのだ。

「冷凍みかんばやるよ(冷凍みかんをあげるよ)」

先ほどの男性が、半解凍のみかんをくれた。口に含むと、味の濃さと甘さに驚いた。天草は、みかんやネーブルの産地でもある。釣りも釣り人との交流もうまくいって、満ち足りた気分で堤防をあとにした。

体中に魚のにおいがつき、撒き餌(まきえ)のオキアミだらけになってしまったので「スパ・タラソ天草」で温泉に入った。海を一望できる露天風呂から水平線を眺めつつさっぱり。昼食は「スパ・タラソ天草」のレストランで鯛のヅケ丼。デザートに「塩ソフトクリーム」をいただいた。  

 

  
天草のお土産 海藻ビーズ 
「ホテル竜宮」の食事で、サラダを彩っていた「海藻ビーズ」を東京に持って帰った。

ビーズのようにカラフルで透明。プチプチとした食感もいい。さらに海藻から作ってあるので、低カロリーだそうだ。人気があるらしく、立ち寄ったお店ではほとんどが売り切れ。

透明でコリコリしたひも状の「海藻サラダ麺」も一緒に使うと、サラダがより華やかになる。
  


満点の星とパール 

今回は1泊で海水浴と釣りがメーンの旅だったが、イルカウォッチングも盛んに行われているし、星空日本一に選ばれた龍ヶ岳で星を眺めるのもいい。「天草パールセンター」で真珠のジュエリーを眺める(買う)こともできる。

海、グルメ、歴史ロマン、日本一の星空。できるなら1週間ぐらい泊まって、全部を味わってみたい。

「天草宝島ライン」