…遅い。遅すぎる。
オレはイライラと靴を鳴らした。
 
高校入学3日目、今日から昼食が始まった。
オレは真綾と屋上で落ち合って一緒に食べる約束をしていた。
真綾との約束の時間から、既に10分が経過していた。あの子は時間に細かい。
オレが遅刻することはあっても、あの子が遅刻することなんて、滅多にない。
………迷子になったりしなければの話だが。
「迎えに行くか。」
オレがそう決意してドアに向かって一歩を踏み出すのと、目の前の鉄製のドアが軽々と外れ
ぶっ飛び、ドアと男が1人もつれ合いオレの足元に転がってくるのはほぼ同時だった。
 
男が頭を押さえて目をあける。「いったぁ…凪紗くんの馬鹿力…ってぁ、白だ。」
…殺す。オレはそう決めた。
足を振り上げ、男の急所へと狙いを定める。
だが足を下ろす前に、邪魔が入った。
「そいつは俺がヤるんだ。手を出さないでくれ?」
声のした方へと視線を向けると、ドアの外れた入り口に整った顔つきの細身の男が1人。
コイツがドアを飛ばしたのか?
その細っこい体のいったいどこからそんな力が出てくるのか。
不思議に思ったが、すぐにそんな考えはオレの脳内から消え去った。
 
細身の男の後ろに、頬から血を流して呆然とへたりこんでいる真綾の姿が目に入ったから。
 
オレの足は動き出す。真綾へと。
ドアの前に障害あり。
平気だ、飛び越えろ。
脳よりも、神経が先に動く。
 
真綾。
 
 
 
奴をドアごとぶっ飛ばし、その動きを追って視線を動かすと、全くの無表情で奴を見下ろす女が1人いた。
何を思ったのか知らないが、その女は奴の急所めがけて足を振り上げた。
「そいつは俺がヤるんだ。手を出さないでくれ?」
気づかぬ間に口から漏れていたこの言葉。
彼女の綺麗な足がそんなところに触れたら一瞬で穢れてしまう。
そんな思いが込み上げてきた。
…オレはどうしたんだ。彼女から、目が…離せない。
彼女は俺へと視線をうつし、目を見開いた。
次の瞬間、彼女はその場から消えていた。いや、正しくは俺の上を飛び越えていた。
 
何が起きたのか俺が理解できたのは、後頭部を勢いよく蹴られた瞬間だった。
いきなりの出来事に俺は意識が遠退く。
…あぁ、今日は災難だな。女に油断した俺の自業自得なのか…?
 
俺は意識を手放した。
 
 
きっと俺は生まれた時から、アイツが嫌いなんだろう。
 
彼は面白い。彼は僕を嫌っているだろうけど、僕は彼に関わりたい。
 
 
今、2つのトキが、交差する。
 
 
相手にするんじゃなかった。俺は今物凄く後悔している。
 
…高校入学3日目。俺は自分の机で雑誌を広げていた。
ふと雑誌に影が降り、俺は視線をあげた。
「君が、紺野凪紗クン?へぇ、意外とまともな人じゃない。予想外。」
影の犯人は、親しげに俺に話しかけてきた。
顔に覚えがない。また、喧嘩を売りにきたやつか…?
「何か用か。」
とりあえず、きいてみた。
「僕は嘉翔汰。キミ、喧嘩強いって、ホント?」
嫌な目をした奴だ。人を見定めるような目。
…こういう奴は関わらないのが一番なのに、何故返事をしてしまったんだろう。
今更ながら、俺は後悔の念にかられる。
「知らん。俺は、ただ平穏に生きたいと願っている普通の男子高校生だ。」
「ふぅん、キミ、僕と手を組まないか。」
「何が言いたい。」
「僕は人と人の関わりをたどるのがスキなんだ。それをもとに商売もしてる。」
…コイツ、何をいってやがる…?
「ま、いわゆる情報屋ってやつかな。」
「は?何で俺がお前に協力しなきゃなんねーんだよ。」
そう言い捨てて、俺は手元の本へと視線を戻そうとして、ヒヤリと冷たいものを首に感じた。
「…何すんだテメエ。」
奴の手には青く鋭く光るナイフが握られていた。もちろんその先にあるのは、俺の首だ。
「ひっ!」と息をのむ声が周りの女子から聞こえてきた。
「僕に、利益があるから協力してほしいんだ。嫌なら、力ずくでもいいよ?」
…コイツ、教室でヤル気か?こんな目立つとこでやったら、ゼッテー白い目で見られんじゃねぇか!
俺はそんなのもうごめんだ。
俺は人並みに幸せに平穏に生きたいんだけなんだが…相手をしないわけにはいかないようだな
「何処か落ち着いてヤれるとこに移動しようぜ。」
「あ、のってくれる気になった?」
「誰がテメエなんかに協力すっかよ。俺は、力で決める場所を指定しただけだ。」
「んー、じゃあ屋上行こうよ。ソコで、交渉。」
「俺はテメエが嫌いだ。全力で拒否ってやるよ。」
「え゛ー酷いなぁ。まだ今知り合ったばっかなのに。ま、僕は結構前からキミを調べてたけど。」
「実力でぶつかってもこねぇ奴は嫌いなだけだ。」俺は素早くナイフから体を離し、奴と距離をとった。
「じゃあ、行こうか。」
ニヤリと不適にアイツは笑った。それにつられて、俺も笑った。
 
 

あの子はオレの絶対だ。

俺は何のためにこの力を持っていて、何のために存在している?

僕は僕の予想を超える人が好き。

私はあなたに他の人も見てほしい。


オレはあの子を護る。

俺は、あいつを振り向かせる。

僕は、キミたちを愛しているよ。

あなたはいつも私を護るという、あなたはだれが護ってくれるの?


オレは

俺は

僕は

私は


祈る。