平成 十一年十二月四日   記

 

 長い間、自動車運転免許証の書き換えの度に、交通安全協会に協力費の名目で数百円ではあるが、手数料を取られるのが面白くなかった。

 

  本来ならば、更新申請用紙は警察署交通課の窓口に、常時置いてあるのが当然だと思う。しかし、それがなぜか安全協会に独占保有されているのだ。どうも癒着のような気がしてならない。

 

 四、五年前までは、更新請求の窓口は安全協会だという既成事実があった。用紙さえあれば、記載事項なんて簡単なことで誰にだって書ける。用紙が無い以上、申請書を自分で作成することは困難である。不本意ながら更新申請書を安全協会に作成して貰うのだから、作成手数料として請求されるのならば納得せざるを得ない。しかし、そのような独占的営利行為は財団法人たる交通安全協会には許されていないし、他の法律にも違反となるので、名目を協力費にすり替えて半強制的に徴収されるのである。一種の詐欺行為のような気がしていたが、僅かな金額だから「マッ、イッカ」と諦めて支払っていた。

 

 前回(平成八年)の書き換えの時には、窓口が警察署に変更されていた。「やれやれ、これで協力費を取られずに済むわい」と思ったのは早とちりだった。交通課の窓口には安全協会の女性職員が座っていて驚いた。「癒着だあ!これはぁ、ダメだぁ」と思ったら、案の定、規定手数料の他に「安全協力費○○円をお願いします」ときた。受付嬢がちょっと美人だけに「NO」と言うのに強い抵抗を感じたが、勇気を出して「その協力費、強制ですか」と聞いたら「いいえ、任意ですよ」と案外さらりとした返事であった。「では、辞退します」と言いながら一万円札を出せば「ハイ、結構ですよ」と釣り銭と領収書を渡された。

 

 本年七月、運転免許証の更新通知書が届いた。それには更新手数料二千二百円、講習手数料七百円、合計二千九百円と明記してあるだけで、協力費については何も記載されていないのを確認して今回は考えた。ポロシャツのポケットに三千円だけを入れて警察署へ更新手続きに行った。受付はやはり安全協会の女性職員である。受付手続きが済むと、「更新手数料二千二百円、講習手数料七百円と、安全協力費六百円、合計三千五百円お願いします」と言われたので「アッ、困ったぁ、ハガキに二千九百円と書いてあったので、三千円しか持っていないんだけど」と言いながら千円札三枚を胸ポケットから出すと「ああ結構ですよ、協力費は任意ですから」と至極あっさりした対応である。殊によると、安全協会側も協力費徴収に後ろめたさを感じつつも、「取れるものは取り得」と言った魂胆ではなかろうか。

 

  この時、後ろにいた品の良い中年女性が「あら、協力費って、払わなくてもいいの、それなら私もご辞退するわよ」と、明るい声でおっしゃった。頼もしい味方の出現で嬉しくなってきた。 

 

 視力検査と写真撮影が終わって、新免許証が交付される時に「古い免許証の写真、記念に欲しいんだけど、戴けませんか」と係官に頼めば、「あぁいいですよ」と気軽に言いながら、パンチで穿孔して免許証を返してくれた。これで良い記念品ができたし、「協会費は強制ですか」とか「辞退します」などと、言いにくいことを言わずに済んで気分爽快であった。

 

 

          ※平成11年に発表した記事です。現在は改善がされている様子。