それは、小三の時だった。
クラスで給食当番を決め、誰が何を運ぶかも決めた。
先生は言った。
「美伊さんは、誰かを誘って食器を持ってきなさい」
食器?
よりによって、一番重たいモノを、誰かを誘って?
そんなこと言ったって、給食当番でもない人を誘えないじゃない。
私は思った。
最初の頃は、先生が一緒に持ってくれたからよかった。
そして、何回目かに給食当番が回ってきた時。
先生はどこかに行ってしまった。
先生の言った「誰かを誘って」が、私はできない子だった。
いじめられっ子だったし、私の頼みなんか誰も聞いてくれないだろうという気持ちがあったのだ。
かと言って、重たい食器を一人では持ってこれない。
私は、良心の呵責に苛まれながら、何も持ってこなかった。
もちろん配膳の時、食器がないと騒ぎになった。
その日、給食を食べながら、先生は、給食当番一人ひとりに、
「○○さんは何を持ってきたの?」
と、訊いていった。
そして、ついに、
「美伊さんは何を持ってきたの?」
私は返事をしなかった。
先生は、クラス全員の前で叫んだ。
「何も持ってこなかったの? あきれた!」
その日の給食の時間、私はずっとみんなの前で、先生にお説教されていた。
公開処刑だ。
「一人では持ちきれなかったからです」
そんなこと、言える雰囲気ではなかった。
仕方ない。
次の日から、私は重たい食器を一人で運ぶようになった。
見兼ねた女の子の誰かが、
「誰かに手伝ってもらわないと、危ないよ」
と言ってくれたが、
「私が手伝ってあげるよ」
とは、誰も言ってくれなかった。
この食器問題、次の席替えで解決したのかどうかは覚えていない。
でも、本当に「友達がいない」というのは、こういうことなんだと実感した小三時代だった。