先輩パパからのメール | YUKAのおもちゃ箱

YUKAのおもちゃ箱

ダウン症があるために筋力が弱い子供の運動機能の発達を促す遊具、
知育に役立つ手作りおもちゃ、言葉や数を理解するためのオリジナル教材の作り方、成長記録などをご紹介しています。

≪平成17年11月16日≫ 
平成17年11月16日に、小学校2年生の優輝(ひろき)君のパパからメールを頂きました。
有香のことを思い、書いてくださった優しさに心を打たれました。と共に、新たな勇気を頂きました。
多くの方の参考になると思いますので、了解を得て転載させて頂くことにしました。


kimiko様

はじめまして、いつも楽しくホームページを拝見させていただいております。
私、現在、東京都に住む7歳のダウン症の息子をもつ父親であります。

お手製のおもちゃやお子様への接し方など、いつも頭が下がる思いで拝見させていただいております。

そんな中、来年の就学に向けて少々お悩みの様子を伺いました。現在我が息子は養護学校2年生でありますが、ちょうど2年前の今ごろ、就学に向けて同じように深く悩んでおりました。少しでも参考になればと思いメールをさせていただくことといたしました。少々お付き合いいただければと思います。

私は息子を授かった時、千葉県に住んでおりました。息子は多少の難聴や弱視、心室中隔欠損等の症状がありましたが、幸い大事には至らず手術等は行わずに現在に至っております。
3歳の頃から知的障害の子が通う福祉施設へ通う様になりました。当時は言葉も出ず、走る事もできず、バス通学だったのですが、不安だらけだった事を思い出します。

4歳になってから小学校就学に向けていろいろと考え出し、東京都内に引っ越す事にしました。その理由ですが、私と仲の良い姉家族が都内に住んでおり、ちょこちょこ遊びに足を運んでおりましたが、だんだんと土地勘も芽生え、近くに普通の小学校、特殊学級をもつ小学校、養護学校の3つがある事が判り、身内が近くにいる、就学に向けては選択肢が豊富ということで、姉家族の家の近くに引っ越す決意をしました。引っ越してからは都内の普通の保育園に通いました。

年長さんになってから就学に向けていろいろと考え、悩みました。実は私の姉は知的障害者の作業所的な場所で働いておりまして、同じダウン症やその他の知的障害の親の方と接する機会が多くありました。また、作業所には元養護学校の先生もおり、いろいろなアドバイスをいただきました。就学に向けてのアドバイスは色々で、「普通学級に入れるのが当然」といった意見や「かわいそうだから養護学校の方がいいわよ」まで様々でした。

就学相談では「養護学校が適切」と言った判定がでました。判定時点では「そうか、それもやむをえない」といった感じで、あまり重くは受け止めてませんでした。

普通学級に強い執着は無く、それぞれの学校にはそれぞれ良いところがあると認識しておりました。

年長当時の息子は、とにかく元気で、あいかわらず言葉は片言の単語、自分の好きなことをしている時には他の言葉が耳に入らず、強く言うとかんしゃくを起こす、外では危なくて手をずっと繋いでいるという感じでした。

就学に向けては、さんざん悩んだ結果、普通学級への就学を目指すこととしました。主な理由としては、
・地元近所に友達ができる
・普通学級へはこのタイミングでしか通えない(養護から普通学級への編入は皆無と聞きました)
・健常児と同じスタートラインから小学校生活がおくれる
・だめなら養護学校へ編入できる
中でも一番大きな理由は、やはりクラスに同じ年の健常児がいっぱいいる事でした。もともと模倣が得意なダウン症児としては、普通学級は養護学校に比べるとクラスの中の生徒数が多く、真似ができるお手本が沢山いるのがとても良い事だと思いました。学校では友達付き合いや生活的なこと、集団行動など、勉強以外に学ぶことが沢山あると思います。勉強も含めそういった部分に関しては同級生から学べる事が沢山あると思い決断しました。元養護学校の先生が言って下さった「子供たちがみんな先生になってくれますよ」で決断しました。

通う予定の小学校に何度も足を運び就学相談を繰り返しましたが、学校.役所側の人間にはずっと養護学校を勧められました。結構ひどい事も言われまして涙涙の面談が続きました。このころが一番悩んでいた時期で、ちょうど今の時期だったと思います。結局、条件付で普通学級に通うこととなりました。条件とは学校にいる間は、親、または身内がずっと付くと言ったものでした。

妻とも話し、妻は当時仕事をしておりましたが、仕事を辞めて息子と一緒に学校に通う生活が始まりました。最初のうちはクラスのみんなもまだまだ幼稚園の雰囲気が抜けきらず、何とかごまかしてクラスの中にとどまれましたが、半年くらい経ってからだんだんと周りのリズムに合わせられなくなってきました。
3学期に入ってからは特にひどかったようです。学校の先生からも「最近は叱る機会が多くなってきて私も辛いんです」とのお話も多く聞くようになりました。一番辛かったのは妻だと思います。一日中ついてその様子を見ていたわけですから。私は当時「親が頑張るしかない」の一点張りで、あまり愚痴も聞いてやらずに申し訳ない事をしたと反省した事を憶えております。

その頃です、2年生への進級に向けた面談が多々ありました。ここでも多く悩んだのを憶えております。その頃の学校の担任や校長先生は息子の事を本当に良く考えて下さっていて、やはり養護学校への編入を勧められました。悩んだ結果、2年生より養護学校へ編入することを決めました。決めてとなったのは、息子の状態もそうですが、やはり妻の辛そうな姿でした。

現在は毎日歩いて養護学校まで通っております。妻を含め、毎日楽しそうに過ごしております。

1年間の普通学級での生活は辛い部分もありましたが、今となってはとても貴重な体験となりました。親が常駐しているせいか、いじめなどは無く、みんな普通に息子と接してくれてました。街中で同級生と会えば大声で息子の名前を呼んでくれますし、たまに家に遊びに来てくれたりします。地元に友達がいるということの大切さを実感しております。

小学校の校長先生ともたまに話しをし、また養護学校の校長先生ともお話をしていただいており、月に一度交流学級も行っていただいております。

私が思いますに、子供にとって最良の選択をしてあげることが一番ですが、(これが一番難しいですよね)現在の教育制度では「普通学級 → 特殊学級 → 養護学校」の流れはあっても逆の流れはないと思っています。この理由だけではないですが、同世代の友達が沢山いる普通学級を、まずは考えていただければと思います。
今の時期、頭の柔らかさで、子供たちは親が考えている以上の事をお子さんにしてくれると思いますよ。
普通学級での卒業を目指し、意固地になっている親御さんも見かけますが、学年が上がるに従って何が最適かを見直し、お子さんが通って楽しい場所を見つけてあげられれば良いのではと思います。

以上、長文、乱文で申し訳ございません、お付き合いいただきありがとうございました。少しでもご参考になればと思います。