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第七章 【軋轢】 その1

後ろ手に縛られた安西の前でドアが開いた。


30坪程のそこは暴力団事務所らしからぬシンプルさで、それが余計に不気味に思える。


奥の机では木庭がパーラメントを燻らせていた。


その両脇に二人の構成員が立っている。彼等はよく訓練された兵士のような印象を与えた。


3人に連れられた安西に、縛られてソファに座る武藤の姿が見えた。



「こいつらヤバイよ安西。伏谷さんはどうなってんだ?」


「あの人は使えねぇ。篤誠会じゃ相手が悪ぃってっさ……悪ぃな武藤」


「……そうか……」 そう呟き武藤は力なく項垂れた。


「見かけによらず強えんだな、安西君」

木庭が立ち上がる。


「あんたが木庭さんか」


「声もうわずってねぇ」

安西に向かい歩きだす木庭。


「たいしたタマだ」


「今回の件は俺が武藤を無理やり巻き込んだんだ。 コイツは解放してやってくんねぇかな」



武藤の横で立ち止まる木庭。


「根性あっても頭はあんま良くねぇな」

ソファに掛けてテーブルの上のアイスピックを取り……武藤の左膝を刺す。叫び声を上げる武藤。


「やめろっ!」


木庭に向かって跳び掛かろうとする安西は髪を掴まれ、膝の裏を蹴られ跪かされる。


「俺は君の嫌がる事をする。だから慎重に喋った方が良い。 『まんじゅう怖い』みたいな内容をな」


同じ空間を共有しながら世の中には色んな世界が存在する。


安西は今更ながら自分が足を踏み入れた世界を認識した。


相互扶助から生存競争。

対極にある二つの考え方。


どちらを信条とし実践するかが天国と地獄を分ける…… ここは間違いなく地獄だ。



「木庭さんアンタ勘違いしてる。俺は誰よりも自分が大切だ。他人なんかどうでも良い。 この状況で俺が唯一怖いのは……アンタとサシの勝負だ。 もしそれが殺されるか解放されるかが懸った勝負だったら、特に怖くてチビリそうだ」



安西が喋り終わると空気が一瞬凍りついた。



「どうだ? 今のが俺の『まんじゅう怖い』だ」


木庭の一瞬ひきつった表情が笑いに変わった。




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