第十二章 【因縁】 その2
「肩の傷は?」
堀渕はまるで他人事のように木庭に訪ねた。
「アンタ見てると疼きだすよ。早く俺の前から消えてくんねえかな」
「ハナから長居する気はねえ。ボブ連れて帰るぞ。そいつ俺の友達なんだ」
「友達?」
ボブを一瞥する木庭。
「もしかしてアンタ今……堅気決め込んでんのか?」
「ああ」
素気なく頷く堀渕。
「ハハッこりゃ傑作だ。アンタが堅気に?」
「それからそこの3人も一緒に連れてくぞ。 友達の友達はミナ友達だってタモリも言ってたし」
「タモリなんか知るか。何勝手な事言ってんだよ」
「森田一義だよ。タモさん知んねえのかお前」
「タモリの事じゃねえよ」 木庭は苛立ち気味に声を荒げた。
「アンタは頂点に上り詰めるか、くたばるかしか選ばねえ潔良い男だと思ってたよ。 堅気だの友達の輪だのアンタの口から聞きたくなかったな」
「友達の輪は言ってねえぞ」
「言ったようなモンだろ」
「あぁ友達の輪的な考え方の事な。タモリは良い事言ってんぞ。 『世界に広げよう友達の輪』、ポーズはともかくあの言葉には真理が含まれてる」
「馬鹿馬鹿しい」
「いいか木庭。誰だって友達を苦しめるのは本意じゃねえだろ? 友達同士ならお互いに助け合う事が自然に出来んだよ。しかもその友達の輪は自分次第でいくらでも広げる事が出来る。敵をつくって苦しむより、どうせなら助け合える仲間を増やす方が良いってな。お前もそう思わねえか?」
「どんだけ綺麗事並べて取り繕っても結局アンタは最悪の悪党だ。 堅気の世界に紛れ込めば今まで犯した罪が消えるとでも思ってんのか?」
「まさか。罪が消えるなんて思ってねえよ。あ、そいつ等のロープ解いてくれ」
堀渕は他の構成員に安西、武藤のロープを解くよう指示する。
構成員達は堀渕と木庭の表情を窺い……ロープを解きはじめた。
木庭は堀渕から一向に目を逸らさない。堀渕は木庭に向きなおり言った。
「俺は間違いに気付いたから改めた、只それだけだ。 過去に固執して罪を重ねるより少しはマシな生き方がしたいと思ってな」
ロープを解かれた安西と武藤、そして涼子がボブに駆け寄る。
「木庭、あいつ等が何やったか知んねえが今回はお前が泣いとけ。 あの二人は俺が責任持って足を洗わせる。 もし次同じような事があったらシメるなり殺すなりお前の好きにしたら良い」
「それって脅しっすか?」
「脅しなんかじゃねえ……俺からの頼みだ」