第六章 【涼子と安西】 その3
「私はもうこれ以上……何も失いたくないんです」
俺に向けて無理につくった涼子の笑顔が痛々しく思える。
「私の仕事……ボブさんから聞いてますか?」
「本人には向いてないから……辛そうだって言ってたよ」
その言葉を聞いて頷く涼子。
「私……風俗店で働いてるんです」
「風俗って、どう言った?」
「ファッションヘルスです。どんな仕事か解りますか?」
「……勿論、解るよ。 その仕事自体は否定しないけど、俺も君には向いてないと思う。 そして向いてないと凄く辛い仕事じゃないかと思うんだ」
今にも涙が零れおちそうな瞳を見開いて、涼子は只俺を見つめる。
「どうしてその仕事に?」
「彼を護る事が出来るなら、私はなんだってします」
「なるほど」 俺の中でようやく涼子と風俗が結び付いた。
「彼に後ろ楯をつくる為に、君はそこで働いているって訳か」
「暴力団関係の人とトラブルがあって、 もう後がないっていう時に伏谷さんって方が助けてくれたんです。 私がその人の所で勤めれば、それからも後ろ楯になるって約束してくれました」
「彼の安全と引き換えに自分の未来を差し出したって訳だ」
「彼が私にしてくれた事を考えると……足りない位です」