荒れ野を北風が強く吹いている。時勢は暗澹(あんたん)としており、戦の火蓋はいつ切られてもおかしくなかった。
しかしながら、開戦前から既に劣勢も否めぬものと噂もされていた。故に、諸藩の中でも特に先鋒を慣例とする藩の藩兵らは、無事の生還など端から望めるものではなかった。愛する者を持つ者は皆、血涙を呑んでの出陣となるのだ。
男が眺めている荒涼の地は、かつて豊作をもたらせてくれた畑であった。毎年秋頃には粟や稗などの穂の揺らめきが輝いて見えたものだ。飢饉の際は救荒作物としても村人達を支えたりもしたのだが、今は見る影もない。ここもやがては廃村となるのかもしれなかった。
更に向こうの方には山峰が臨めるが、男にはそれが前途を阻む巨壁の連なりに思えてならなかった。悲観の色合いを湛(たた)える夕陽が大地と、そして女と見間違うほどの白くやわらかな男の顔を紅く染め上げていた。
もはや、戦の中で倒れゆくものと覚悟は決めている。だが、心残りがひとつだけあった。この男にも想いを寄せる娘がいるのだ。やはり同様の白く美しい肌と、黒く澄んだ瞳を持ち合わせ、清楚で控えめな村でも評判の娘であった。
せめて、胸の内を伝えるだけでも……そう考える反面、死を賭しての出陣である事実を打ち消すことも出来ない。想いを打ち明けたところで却って未練を強めてしまうだけなのではないか……。やはり会わぬまま、村を後にした方が良さそうだ。割りきれぬ思いを巡らせて男は立ち尽くしていた。
やがて、その場を去ろうと僅かに踵を返しかけたその時である。背後に人の気配を感じ取ったのだ。振り向くと、男の恋い焦がれるその娘がそこに立っているではないか。目が合った刹那、息を呑み、思考も動作もがんじがらめにされてしまった。
娘は表情を浮かべず、ただ黙って波立たぬ湖面のように静かな視線をこちらへ送ってくる。それに対して男は、声を発することも身振りをしてみせることもかなわなかった。重い沈黙が垂れ込め、互いに見つめ合うばかりである。
男の中で無数の思いがせめぎあい渦を巻き、混乱をきたしている。だが、それも徐々に静けさを取り戻していった。そう、このまま何も言わず娘と別れるのだ……。目を伏せて、男はその場から離れようとした。それなのに、意に反して身体が娘の方へ向き直り、ついに思いの丈を伝えてしまうのだった……

☆「好きです
」
☆「そんな……」

☆「好きなんです
」
☆「恥ずかしい……」

☆「でも好きなんです
」
☆「いけないわ……」

☆「ホントに好きなんです
」
☆「けど……」

☆「たまらなく好きなんです
」
☆「ゴメンなさい、私ほかに好きな人がいるの
てへ♪」
「が~~~ん
」やがて閧の声が上がり……

☆「もう、やけくそ~~~!!」
今はもう未練も絶ち、ただ阿修羅となりて戦場を駆け巡るのみ……嗚呼、まことこの世は無情なるかな……砂塵を巻き上げ、男はひたすらに……ただひたすらに突き進んで行くのであった。
『そよ風気分』完
《あとがき》
☆う~ん、やっぱ大河ドラマって難しいなぁ……。
(;´д`)

Thanks to ひこにゃん♪ &
キティちゃん♪
☆そして……Thanks to
ブロガーの皆さん!!
ここまでのお付き合い、本当にありがとうございました!!皆さん、お元気で!!
(^_^)/□☆□\(^_^)


