小学校の時、クラスの中から転校する生徒がいると、その子のためにクラス総出で「お別れ会」を開いたりしたものです。








 授業の終わった後、全員の机を教室の後ろへ寄せてスペースを作り、椅子を並べて会場をセッティング。黒板に何色ものチョークで彩りを施し、その中央には転校する生徒の名前がでかでかと書かれたりします。









 会が始まると各班で出し物を披露して場を盛り上げ、その後にプレゼントやクラスメイトの寄せ書きの色紙を贈呈。締めは転校する本人が感謝の言葉を読み上げて感動冷めやらぬ内にフィナーレ!だいたいそういった流れだったと思います。







 ある日、O君という男子生徒が転校することになり、お別れ会が開かれました。会の中盤辺りになって、特に仲の良かった友達が数人、涙を浮かべるようになります。それをきっかけに貰い泣きする生徒が一人増え二人増え……気が付けば、周囲の生徒達ほぼ全員が涙に暮れているではありませんか!!泣いていないのは僕一人……汗






 実に気まずい状況です。せめて泣く真似だけでもと思ったのですが、焦れば焦るほど感傷的なものは遠ざかってゆくばかり。ふと気が付けば、担任の先生(男性)までが涙で目を赤くさせているではありませんか!とうとう最後まで僕一人だけが涙を流さなかったのです。







 その日の帰り道、友達からは、「あんな状況でよく泣かないでいられるよな……お前、〝さんげん〟なんじゃねえの?」とか言われる始末。『さんげん』というのはその当時、クラス内で流行った造語で「にんげん」の心を持たない者……つまり「にんげん」ではなく、『さんげん』ということなのです。





 数日経ってから、理由は忘れましたが、ある事柄でクラス全員が担任の先生に叱られていました。先生は顔を真っ赤にさせて怒っています。挙げ句の果てに、「そんなことだからねえッ……クラスメイトと別れることになっても、涙一つ流さない生徒が出てきたりするんですよッ!!」と怒鳴り付けて、僕の方へチラッと視線を投げつけてきたりしたのです。







 これには正直、参りましたあせる『クラスの皆が泣いているのに、なぜお前だけ泣かないんだ!?』そんなことを、事あるごとに引き合いに出されたのでは、たまったものではありません。さて、どうしたものか?









 そうこうしている内に一ヶ月程が経ち、今度はクラス内で女子のNさんが転校することになりました。その日も班ごとの出し物があり転校生からの言葉があって、締めは皆で歌をうたったりしたのですが……







 O君の時とはうってかわって、今度は明るく楽しく笑顔の絶えない、実に賑やかなお別れ会となりました。だ~れも、ひと~りも涙なんぞ流しておりません。勿論、担任の先生も♪そもそも、生徒達が涙に暮れるお別れ会というもの自体が、稀なケースなわけですから……。








 でも、もしここで今度は僕一人だけが涙を流したとしたら……次は、いよいよ『よんげん』の世界へ突入してしまうのだろうか?子供心にふと、そんなふうに思ったりもしました。











 まあ、泣く泣かないは別として、あのお別れ会の時、寂しい思いが胸の内にあったことに変わりはありません。僕もO君とは何度も遊んだ仲なのですから……。